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Vol.8 (1987/1[083])

<国内情報>
1986年の奈良県におけるエコー7型の流行


ウイルス分離用細胞にはHEp2(大阪府公衛研分与),HeLa(東京都衛研分与),FL(大日本製薬),RD-18S(愛知衛研分与)を用いた。各種細胞でのエコー7型分離数は表1のごとくで,このうちRD-18Sのみで分離された数は5,HeLaのみで3,HEp2のみで1であった。各種細胞での分離数ではRD-18Sが若干多い位であるが,CPEの明瞭さはRD-18Sが非常に優れており,同定にはこれを用いた。同定はデンカ生研の混合血清および単味血清を用いて中和反応で行った。

 エコー7型の検体別分離数は表2のごとくで,ウイルス分離陽性率24.2%のうち10.4%がエコー7型であり,濃厚な浸淫を受けたと推定される。

エコー7型感染による主要な臨床診断名を55例について調査したところ,扁桃腺炎16例,無菌性髄膜炎15例,感冒性下痢症8例,アンギーナ7例,その他15例で,臨床症状では上気道炎が90.9%にみられる他,嘔吐41.8%,髄膜炎27.3%,下痢21.8%がみられた。その他発疹が4例に,泌尿器疾患が3例にみられた。

 患者の年齢は1ヶ月〜14歳で6歳以下が多かったが,6歳以上では下痢はみられなかった。また,発熱は38.0℃〜40.3℃がみられるが,39℃台が多く,7歳以上では全て39℃台であった。

昭和57年より行っている奈良県感染症サーベイランスの患者報告の中で無菌性髄膜炎の報告数は本年が最高で,10月末で262名を数えた。特に7月には80名の報告があり,これも過去最高である。

本年の無菌性髄膜炎の患者数と分離ウイルスを図1に,エコー7型の分離数を年齢別,月別に表3に示す。

 エコー7型の流行が夏期の無菌性髄膜炎の流行を起こしたと考えられる。以上は1986年10月末現在の状況である。



奈良県衛生研究所予防衛生課


図1.無菌性髄膜炎患者数と分離ウイルス(1986年)
表1.4種類の細胞でのエコー7型分離数
表2.検体別ウイルス分離状況
表3.月別・年齢別エコー7型分離数





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