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鳥取県では,1986年夏を中心にエコーウイルス7型感染症が多発した。現在までに,無菌性髄膜炎(疑い含む)56名,上気道疾患32名,咽頭炎6名,発疹症4名,咽頭結膜熱(疑い含む)2名,ヘルパンギーナ2名,熱性けいれん1名の計103名から分離されている。鳥取県では,以前1976年に1名,1977年3名,1979年1名から分離されている。しかし,いずれも散発例で,流行には至っていない。
1979年の分離株までは10年以上前に予研より分与された単味血清で容易に同定できたが,1986年の分離株はbreak through現象が起こり攻撃ウイルス量が多い場合には同定できないこともあった。このことはエコー7型の抗原性に変化が起こっているものと考えられ,今年の流行につながっていると思われた。
無菌性髄膜炎では,現在までに194名から分離材料が得られ,エコー7型56名(うち髄液からの分離26名),未同定ウイルス22名(11名),コクサッキーB3型10名(3名),アデノ2型2名,アデノ3型2名,ムンプス3名(2名),コクサッキーA9型1名,ムンプスとコクサッキーA9型の同時分離1名の計98名からウイルスが分離されている。ここで未同定として残っているウイルスは,シュミット・プール血清で全く同定できない株と前述のbreak through現象のために再同定を要する株の両方を含む。
エコー7型による髄膜炎の月別分布は5月1名,6月2名,7月17名,8月22名,9月10名,10月4名であった。地区別にみると,県西部では5月に初めて確認され,7月中旬をピークとして流行した。西部での流行は,中部,東部へと広がり,中部では8月上旬,東部では8月中旬をピークとして流行し,現在まで続いている。
またコクサッキーB3型による髄膜炎は,エコー7型による髄膜炎よりやや早く,6月から7月上旬にかけてみられた。
エコー7型による髄膜炎の年齢分布をみると,生後8日の新生児から15歳までの広い年齢層にみられ,特に3歳から7歳に多くみられた。1986年は1歳未満の患者材料が多く,18名を数え,うち11名からウイルスが分離され,エコー7型は6名であった。エコー7型の6名は,生後8日,27日,2,5,6,7ヶ月児であった。
髄膜炎の流行時期と時を同じくして,髄膜炎以外の47名からもエコー7型が分離されている。0〜1歳の乳幼児と年長児では症状が異なり,0〜1歳の8名では発疹症4名,上気道炎2名,ヘルパンギーナ1名,熱性けいれん1名であるのに対し,2歳以上の39名では, 上気道炎30名, 咽頭炎6名,咽頭結膜熱2名,ヘルパンギーナ1名であった。
乳幼児に発疹症が多くみられたが,0〜1歳の9名を含めた無菌性髄膜炎患児の中には発疹を伴う例はみられなかった。
鳥取県衛生研究所 石田 茂 寺谷 巌 深沢 義明
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