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滋賀県立衛生環境センターでは,湖南,湖東,湖北,湖西の4地域(図1)の医療機関の協力を得て,主に発熱,上気道症状を呈する小児科外来患者の咽頭拭い液からのウイルス分離を行っている(検査実施検体数は毎月各地域約20件:計約80件) 。1986年は10月現在で523件検査し,124株のウイルスが分離同定された。エンテロウイルスは96株であったが,このうち,エコーウイルス7型(E7)が61株(63%)と最も多かった(12月6日現在)。E7は県内では1974年,80年に各1株分離された記録があるが,今年のように多く分離されたのは調査開始以来始めてであった。なお,E7は,大部分RD-18S細胞(愛知県衛生研究所・栄氏より分与)によって分離された。
E7の地域別,月別分離状況を表1に示した。E7の流行は,湖北地域では早く始まり(5月から),3ヶ月間で終わったが,その他の地域では1ヶ月遅れて始まり,湖南,湖東では5ヶ月間,湖西では4ヶ月間続いたと考えられる。それぞれの地域でのピークは6月,8月,7月と1ヶ月のずれがみられた。なお,滋賀県は近畿圏に属しているが,湖北地域は中部東海圏にも接し,この地方の影響を受ける。
E7分離陽性者の年齢分布をみると,4歳〜5歳が30%と多かったが0歳から13歳までの幅広い年齢層に分布が見られた。E7分離陽性者の症状出現頻度は,発熱(61人:100%),上気道症状(48人:78.7%)以外に,胃腸症状を呈した者(14人:23.0%)があった。最高体温の分布は,38.5〜38.9℃のものが39.1%で最も多かった。また,40℃以上を示したものが11.5%あった。
無菌性髄膜炎患者からのE7の分離:滋賀県感染症サーベイランス事業報告によると1定点あたり無菌性髄膜炎の患者通報数が多かったのは,1983年(エコーウイルス30型が主流行)の30.9人,次いで1984年(コクサッキーウイルスB5型が主流行)の17.0人であるが,86年は11月現在で9.3人であり,さほど多くはなかった。無菌性髄膜炎については, 感染症サーベイランス事業での湖南地域の検査定点から送付される検体(主として髄液)について検査を行っている。患者42名(髄液33件,咽頭拭い液7件,糞便4件)のうち,10名(髄液8件,咽頭拭い液2件,糞便1件)からE7が分離された。陽性者の年齢は4歳〜11歳,採取月は7月〜9月であった。
滋賀県立衛生環境センター 横田 陽子 榊原 春司
図1.滋賀県地域区分
表1.エコーウイルス7型の地域別・月別分離状況(1986年)
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