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Vol.8 (1987/6[088])

<特集>
ヘルパンギーナ 1986


日本では毎年夏季に7月をピークとしてヘルパンギーナの流行がみられる(図1)。分離される病原ウイルスの大部分は常にコクサッキーA(CA)群の2〜6および10型で,これらの間で年ごとに順位が入れ替わって,毎年異なる型が主流を占める。

1986年のヘルパンギーナ患者からのウイルス検出数は468で,この年はCA6,5,4が上位を占めた(図2)。また,これらの型では各型とも検出数全体の70%前後にヘルパンギーナの症状が報告されている(表1)。

 CA以外では,1986年に大流行したエコー7で1582例中34例にヘルパンギーナの症状が報告された。さらに,ヘルパンギーナの症状があったものからのウイルス検出として,単純ヘルペスおよびアデノウイルスが合計10%程度毎年報告されるが,これらウイルスの病因としての役割は明らかではない。

ヘルパンギーナ患者からのウイルス検出状況を月別にみると,CA6,5,4のいずれの型も7月をピークとして検出された(図3)。

 年齢別にみるとCA6,5,4型のいずれも1歳の検出報告が最も多く,0〜4歳の検出がそれぞれ,84,82,88%を占めた。エコー7は34例中13例が0歳から検出された。(図4)。

 ヘルパンギーナとともに記載された臨床症状としては,発熱がCA6検出例の73%,CA5検出例の81%,CA4検出例の57%に,上気道炎がそれぞれ10%,20%,14%に報告された(表2)。

 検体の種類をみると,ヘルパンギーナ患者468例中336例は鼻咽喉から,143例は便からウイルスが分離された。型別では,CA6は151例中98例,CA5は82例中59例,CA4は51例中42例が鼻咽喉材料から検出された。

1986年のヘルパンギーナ患者発生状況を地域別にみると,一定点当たり患者発生数が50.0を上回る県市が57県市のうち18県市で,これは1985年(21県市)を下回った(図5)。患者発生の多かった大分をはじめ神奈川,静岡,愛知,高知では,CA6,5,4の3型すべてが患者から検出された。島根,横浜,京都市,福岡ではCA6,5,愛媛,群馬ではCA6,4,奈良,香川ではCA5,4,秋田,鳥取,広島ではCA6,滋賀,大阪ではCA5が検出された(表3)。

 1987年については,5月末現在例年よりやや早く患者発生の増加がみられる。流行が始まっているのは熊本,福岡,佐賀など九州地方で,今後南から北へ進行していくものと思われる。



図1.ヘルパンギーナ患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
表1.年次別コクサッキーA群ウイルス(2〜6,10型)検出数
図2.ヘルパンギーナ患者からのウイルス検出状況(1986年)
図3.ヘルパンギーナ患者からの月別ウイルス検出状況(1986年)
図4.ヘルパンギーナ患者からの年齢別ウイルス検出状況(1986年)
表2.ヘルパンギーナ患者ウイルス検出例の臨床症状(1986年)(複数回答あり)
図5.ヘルパンギーナ患者発生状況(1986年)
表3.ヘルパンギーナ患者からの住所地別ウイルス検出状況(1986年)





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