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日本では毎年夏季をピークとして手足口病の流行がみられる。昨年および本年は2年引き続いて患者発生が少ない(図1,表1)。
地域別にみると,1986年の患者発生は一定点当たり患者発生数の最も多かった高知県で年間63.6であったのがめだつのみ(85年の最高は香川県の174.09,全国平均65.15)で,以下多い順に熊本県(28.6),愛媛県(24.9),福岡市(24.3),埼玉県(21.9),静岡県(20.1)となり,一定点当たり患者数10以下の県市が30県市と過半数を占めた。1987年は第32週までの累積で最も患者発生が多いのは前年最低であった沖縄県の一定点当たり99.0(1986年は年間で0.9)で,その他の地域では宮崎,千葉,宮城,鹿児島の4県でやや患者発生報告が多い(37.0〜23.7)ていどである。
患者の年齢は1〜4歳が約7割を占め,例年どおり低年齢層が流行の主流である(表2)。
表3は手足口病症状のあったものからの年次別ウイルス検出数である。1986年はEV71が69例に対し,CA16,CA10は各1例しか検出されていない。1987年は8月末現在,EV71が5県から7例(表4),CA16が2県から4例と,ともにまだ報告が少なく,今夏のウイルスの動向は今後の報告の追加を待たなくてはわからない。
1986年にEV71の検出報告があったのは,四国を中心に17県市であった(表4)。1987年のCA16は広島市(3,4月各1)と大分県(6月,2)から報告された。
1986年のEV71の報告では69例中鼻咽喉から53(76.8%),皮膚病巣からは14(20.3%),便からは9(13.0%)分離された。このほか皮膚病巣からはCA6が1例分離報告されている(表5)。EV71は69例中68が細胞,1例が動物によって分離された。
EV71が分離された年齢は69例中66例が6歳以下で,このうち多い順に2歳15例,3歳13例,0歳11例,1歳9例,4および5歳各7例,6歳4例であった。
1986年に報告されたEV71の全報告中,手足口病症状が報告されたものは69/97(71.1%)であった。1986年の手足口病に関する集計成績は,発生数がめだって少なかったにかかわらず,全体の傾向には従来と差はみられない。また,手足口病症状と同時に髄膜炎が報告された例がEV71に3例,エコー7に2例,CA9とCB2に各1例あった。
図1.手足口病患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
表1.年次別手足口病患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
表2.年齢群別手足口病患者発生状況(1986年)(感染症サーベイランス情報)
表3.手足口病症状のあったものからの年次別ウイルス検出状況(1981〜1987年)
表4.手足口病症状のあったものからの月別・住所地別 EV71ウイルス検出状況(1986年1月〜1987年7月)
表5.手足口病症状のあったものからの検体の種類別ウイルス検出状況(1986年1月〜12月)
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