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Vol.8 (1987/11[093])

<外国情報>
腸管伝染性非A非B肝炎(ET-NANB)−メキシコ


 米大陸初の流行が1986年8月および9月をピークとしてメキシコの2農村地区で発生した。ひとつは1,757住民中94人,30マイル離れた第2の町では2,194住民中129人が発症,前者は雨期開始1月後,後者は3月後に始まった。いずれも攻撃率は5〜6%,流行は20週続き,患者は大部分が食欲減退,尿黄染,さらに腹痛,関節痛,発熱を示した。合計で妊婦でない成人女性3名死亡。妊婦感染では1例は異常なかったが,1例は黄疸発症後15日で32週未熟児を出産した。攻撃率は15歳以上が10%と高く,これ以下は2%,男女差はなく,住居ブロックによって著名に異なった。両地域とも屎尿処理システムをもたず,小川の水の利用,汚染井戸およびヒト−ヒト接触が発症と関連した。患者の多くは抗HAV陽性だが,IgM抗HAV陽性は2名のみだった。HBs抗原はすべて陰性。免疫電顕で28〜34nmのウイルス様粒子が,第1流行で8例中3例,第2流行で1例に認められ,アジアのET-NANB患者の血清で凝集,また,患者血清プールはソ連流行因子を凝集した。

 ET-NANBは経口感染し,インド,ネパール,ビルマ,パキスタン,ソビエト,アフリカで流行が報告されている。ヒト−ヒト伝播もあるが,多くは下水不備地域で大雨後に流行する。妊婦の死亡率が高く,患者は子供より大人に多い。診断は疫学的特徴,HA・HB感染の除外,免疫電顕による便中のウイルス様粒子の同定と過去の患者血清を用いた凝集反応による。最近,実験的感染モデル(マーモセットとカニクイサル)が確立された。第1の流行でヒト免疫グロブリンの投与が試みられたが,投与者中6人が17〜45日後に発症した。

(CDC,MMWR,36,36,1987)






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