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日本では例年夏季をピークとして手足口病の流行がみられる。1986年は患者発生が少なく,1987年も8月中旬までは沖縄で患者発生が多かったのを除くと全国的に患者発生が少なかった
(本月報91号参照)。
しかし、9月に入ってから再び患者発生が増加し始め,45週をピークとして年末に現象するまで続いた(図1)。この結果,1987年の患者発生数は最近4年間では1985年に次ぐものとなった(表1)。
地域別にみると,1987年の一定点当たり年間患者発生数は,宮崎県(146.5),福岡市(132.9),福岡県(113.4),北九州市(107.8),沖縄県(105.8),熊本県(101.5),大分県(93.6),佐賀県(90.5),広島市(83.3),広島県(69.5)など西日本で多かった。1986年最高(63.6)だった高知県は9.0と少なかった。
患者の年齢は低年齢層が流行の主流である点は例年どおりである。1987年から患者の年齢区分が0〜4歳までは1歳刻みに細かく報告されることになったので,1〜2歳が約半数を占めることがあきらかとなった(表2)。
1987年に手足口病症状のあったものから検出されたウイルスとして1988年2月までに報告されたのは173で,このうちEV71が62,CA16が88である。今後さらにかなりの検出数が追加されるものとみられる。検出状況を月別住所地別にみると,EV71は7月をピークとして12県市から,CA16は11月をピークとして15県市から報告されている(表3,表4および
本号2〜5ページ参照)。
1987年に手足口病から検出されたEV71は62例中鼻咽喉から54,便から8,皮膚病巣から5,髄液から1が分離された。同じくCA16は88例中鼻咽喉から77,皮膚病巣から15,便から9が分離された。このほかCA10が鼻咽喉から4例分離報告されている(表5)。EV71は62例中59が細胞,3がマウス,CA16は88例中80が細胞,11がマウスによって分類された。
EV71,CA16ともに5歳以下からの分離が主である(表6)。さらに23歳男と34歳女の成人2例が神奈川から報告された。
1981〜1987年の7年間に検出されたEV71とCA16について,手足口病と髄膜炎の報告をまとめたのが表7である。EV71に髄膜炎が多く,手足口病と髄膜炎が同時に報告された数もEV71のほうが多いが,CA16でも検出数の多かった年にはまれに手足口病と髄膜炎の合併例が報告されている。1987年に報告されたEV71による手足口病と髄膜炎の合併例4例の年齢は3歳2例,1歳および4歳各1例であった。
図1.手足口病患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
表1.年次別手足口病患者発生状況(1987年)(感染症サーベイランス情報)
表2.年齢群別手足口病患者発生状況(1987年)(感染症サーベイランス情報)
表3.手足口病症状のあったものからの月別・住所地別EV71ウイルス検出状況(1987年1月〜12月)
表4.手足口病症状のあったものからの月別・住所地別CA16ウイルス検出状況(1987年1月〜12月)
表5.手足口病症状のあったものからの検体の種類別ウイルス検出状況(1987年1月〜12月)
表6.手足口病症状のあったものからの年齢別CA16,EV71ウイルス検出状況(1987年1月〜12月)
表7.年次別CA16ウイルスとEV71ウイルス検出状況
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