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Vol.9 (1988/8[102])

<国内情報>
水害に伴った水系感染カンピロバクター食中毒


 1988年5月に熊本市K高校で食中毒があり,共通の食品は飲用水(井戸水)のみであった。糞便検査でCampylobacter jejuniが検出され,約50日後の血清凝集素価測定でも高値の者がみられたので,その概要を述べる。

 5月3〜5日の連休日に合宿あるいは登校していた運動部の生徒から4日,5日に,さらに6日登校した一般生徒からもその後食中毒症状患者の発生がみられた。

 日時別発生状況は4日に8名,5日に23名,6日に109名,7日に48名,8日に26名,9日に9名,10日に3名,不明8名,計234名である。

発病率は1,054名中22.2%,症状は表の通りである。

 5月6〜8日に有症者10名,健常者63名の糞便を検査し,それぞれ2名,計4名からCampylobacter jejuniが検出され,血清型は東京都衛研のTCK30が3例,型別不能が1例であった。その他の細菌性食中毒の原因と考えられるものはすべて検出されなかった。

 学校はすべて井戸水に依存しているが,各蛇口からの21検体はミリポアフィルターを使用しての検査でCampylobacter陰性であった。大腸菌群は17検体が陽性であり,一般細菌数で飲用不適が4検体であった。

 熊本地方は5月3日に351oの集中豪雨があり揚水系統に冠水がみられた。塩素滅菌設備はなく,保健所は7日に校内飲料水の使用禁止,市水道配管を指示した。

 6月27日に有症者20名の血液が得られたので2血清型菌液を用いて凝集価を測定したが,TCK30に対し160倍2名,320倍2名と4名が高値であった。

 水菌の水系流行は1978年のアメリカを始めとして各地から報告があり,わが国でも1980年の岩手県例以来多くの事例がみられる。熊本県でも1985年井戸水を使用している小学校のCampylobacter食中毒があり,患者便,飲用水から同一血清型の菌が分離された。発病率は318名中67.3%であった。

 本事例は既報告に比し症状が軽く,特に下痢,発熱の発現率が低い。また,有症者からの菌検出率も増菌を併用しているにもかかわらず低率である。以上2点からCampylobacterの水系感染に不明の食中毒要因が重なっていることも考えられる。なお,本事例ではウイルス学的検索はなされていない。



熊本市保健衛生研究所 本田れい子
熊本県衛生公害研究所 道家 直








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