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Vol.9 (1988/8[102])

<国内情報>
愛媛県におけるC群ロタウイルスの流行


 愛媛県においては,1985,86年に少数例のC群ロタウイルスを検出しているので,その後もC群ロタウイルスの動向を監視するため,電顕法でロタウイルス陽性例について,PAGEによるウイルスRNAの泳動型の分析を行ってきた。その結果,1988年2月から5月にかけて,世界的にもいまだ例をみないほどの多くのC群ロタウイルスを検出したので,その概要を報告する。

 材料は,松山市内の1小児科医院外来の急性胃腸炎患者から採取した糞便を用いた。PAGEによるウイルスRNAの泳動型の分析は,電顕法でロタウイルス陽性の糞便から,Herringらの方法に準じて行った。C群ロタウイルスの同定は,1986年に検出したC群ロタウイルス(86−542株)のモルモット免疫血清(抗86-542抗血清)を用い免疫電顕法(IEM)で行った。

 電顕によるロタウイルスの検出は,1986年11月から87年8月の間に102/490(20.8%),87年11月から88年5月の間に149/313(47.6%)であった。泳動型の分析では,1986〜87年はすべてA群ロタウイルスの泳動型のみであったが,1987〜88年には,48例のC群の泳動型を呈する株が検出され,L型,S型はそれぞれ45例,23例であった。C群ロタウイルスの泳動型を呈するもののうち5株について,抗86-542株抗血清を用いIEMによる同定検査を行った。この5株に抗86−542株抗血清に対するIEM抗体価は,homologous抗体価および85年,86年のC群ロタウイルスとほぼ同じ値を示し,今回のC群の泳動型を呈する株がC群ロタウイルスと同定された(表1)。

 C群ロタウイルスは,A群と比較して,その疫学像に差異が認められた。患者の年齢分布は,C群ロタウイルス陽性者の方が高年齢小児に多い傾向が認められた(表2)。患者の平均年齢はA群が2.7歳に対し,C群が6.2歳であった。通常のA群ロタウイルスが多く侵襲する0〜1歳児に対し,C群ロタウイルスがほとんど浸淫していないことは,血清疫学的にも認められており,C群ロタウイルスの伝播様式がA群と同様,糞口感染が主であるとすれば,C群の伝播効率が低いことを示唆しているものと考えられる。

 次に異なる点は,C群ロタウイルスの流行時期がA群に比べ遅いことである。C群ロタウイルスは1987年12月に1株検出されたが,その他の47株は2月中旬以降で,検出のピークは3月であった。

 本年は,日本各地でC群ロタウイルス検出の報告を聞いており,今後,本ウイルスがいかなる流行をするのか,さらに継続的な監視が必要であろう。



愛媛県立衛生研究所 大瀬戸光明 山下育孝


表1.IEMによるC群ロタウイルスの同定
表2.ロタウイルス陽性例と電気泳動型の年齢分布





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