HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.9 (1988/8[102])

<国内情報>
今冬検出された非定型ロタウイルス


 1987年12月から88年4月にかけ,A群ロタウイルス(A群と略)85件の他に,非定型ロタウイルス(非定型と略)10件が検出された。

 月別検出頻度はA群が2月をピークにほぼ正規分布するのに対し,非定型は1月から4月にかけ微増する傾向がみられた(表1)。

 年齢別にみるとA群は1歳にピークがあり,0〜3歳までが全体の87.1%を占め,乳幼児が主であるのに対し,非定型では1〜9歳まで各年齢ごとに1〜2件検出され,特に3歳以上が80%を占め,年長児に多い傾向であった(表2)。また,非定型の検出された8歳児と1歳児は兄弟であり,兄の発病2日後に弟が発病した。

 非定型のRNA電気泳動パターンは,A群に比し第7分節が第6分節に近接すること,第10,11分節の移動度がA群L型のそれより大きいという特徴を有し(図1),C群のRNAパターンに酷似していた。また,株によるパターンの差異はみられなかった。

 このように,従来わが国では非常にまれであった非定型が比較的多く検出され,しかも,A群類似の症状を有することから,本ウイルスは感染性胃腸炎の病原体として看過できない。

また,非定型陽性糞便2件について,市販R−PHAキットを用いてロタウイルス抗原の検出を試みたが,いずれも陰性であった。このことは,こうした市販試薬では非定型を見逃す危険性の大きいことを示している。



岡山県環境保健センター 上羽 修 藤井理津志


表1.月別ロタウイルス検出状況
表2.年齢別ロタウイルス検出状況
図1.非定型ロタウイルスのRNAパターン





前へ 次へ
copyright
IASR