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米国では1970年以来,NNIS(National Nosocominal Surveillance System)に基づいて病院内感染の情報を集めている。情報は一定様式に従ってCDCに送られ解析される。
病院は3つのカテゴリー(大中小)に分けられ,6診療科(内科,外科,産科,婦人科,小児科,新生児科)ごとの退院者数とともに,感染部位,発症日,入院科目,年齢,性,分離病原体とその抗生剤感受性,二次菌血症の有無,死亡例と院内感染との関連の各項目について毎月報告する。
1984年には51の病院が参加した。院内感染率(退院患者当たり)は大規模病院で高く,小規模病院で低いが,平均3.4%で,1980〜1983年とほぼ同率であった。いずれの病院でも,診療科別では高い順に外科,内科,婦人科,部位別では尿路感染,下気道あるいは外科の傷創感染であった。報告された26,965例の64%が単独病原体,20%が複数病原体による感染で,6%が同定されず,10%が培養陰性であった。同定された病原体のうち,好気性細菌86%,嫌気性細菌2%,真菌8%,ウイルス,原虫,寄生虫による感染は5%であった。尿路感染から高率に分離される病原体は順に,E.coli,enterococci,P.aeruginosaであり,傷創からはS.aureus,下気道からは,P.aeruginosaが高率に分離された。メチシリン耐性S.aureusの分離が最も多いのは大規模病院であった。院内感染による死亡率は約1%,死亡の誘引となったものも含めると3%であった。
(WHO,WER,63,bQ7,1988)
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