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アデノ40型ウイルスを分離したので概略を報告する。
アデノ40は,1988年6月16日に発病し,感染性胃腸炎と診断された生後8ヵ月の男児の発病後3日のふん便から分離された。
ふん便中のアデノ抗原は抗アデノ41ウサギとモルモット血清を用いたサンドイッチELISA法で陽性を示した。アデノ40,41の細胞による分離はウイルスの増殖が悪く労力を要するので,われわれは愛媛衛研大瀬戸らと共同し,アデノ40,41に対する特異モノクローナル抗体を作製した。そのモノクローナル抗体を用いたELISA法で1例がアデノ40と同定された(表)。さらに組織培養による分離も試みた。ウイルス分離には荒木(ウイルス36,273-282,1986)と予研松永の方法を取り入れ,293細胞を用いたco-cultivationを行った。小試験管に0.1ml に浮遊させた293細胞(80万個)に10%ふん便乳剤遠心上清を0.5ml加え,37℃で90分間吸着(この間15〜30分間隔で攪はんしている)させ,その後軽く遠心し,上清を除き,5%FCS加MEMを5ml加え,それをプラック培養瓶(25cm2)に移し,37℃で培養した。細胞がフルシートとなったら,2%FCS加MEMを維持液として2〜3日間隔で液換えを行い(なお,293細胞は非常に剥がれ易いので,培養瓶を移動させる時には培養液を動かさないように静かに行い,液換えの時には細胞に培養液を直接当てないようにすること),8〜10日間観察した。2代目からはCPEの認められ無かったものは20%の,CPEの認められたものは10%の細胞をとり,初代と同じ量の細胞を加え培養した。
今回のアデノ40の分離例によるウイルス増殖とモノクローナル抗体による同定成績を表に示した。3,4代目でウイルスの増殖が悪かったが,この原因については良く分からない。培養では蛍光抗体法で5代目で,ELISA法では7代目で40と同定された。また,CPEが強く現れたのはやはり7代目であった。中和試験はまだ行っていないが,9代目でやっと行えるようになったものと考えている。
なお,電顕,ELISA,ラテックス凝集反応等でアデノ陽性の検体で,40,41の型別を希望される先生がおられましたら,西尾宛に検体をお送りくだされば,型別試験を行います。
愛知県衛生研究所 西尾 治,栄 賢司,山下 照夫,石原 佑弌,磯村 思尤
アデノ40型ウイルス分離例の増殖とモノクローナル抗体による同定
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