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Vol.10 (1989/4[110])

<国内情報>
京都市における肺炎マイコプラズマの分離状況


 4年周期で流行を繰り返すことが知られている異型肺炎は,1987年10月頃から全国的に患者発生の増加が見られ,1988年は流行年になることが予測された。そこで,京都市では1988年7月から京都市サーベイランス事業として,上気道炎等の呼吸器症状を伴う患者の咽頭ぬぐい液から,肺炎マイコプラズマ(M. pneumoniae,以下M.pnと略)の培養検査を行った。その結果,7,8月は分離できなかったが,9月以降はM.pnを高率に分離し,12月中旬以降はインフルエンザウイルスA(H11)(以下Inflと略)等との重複感染例が多数見られたので,これらの状況について述べる。

 1988年7月から1989年2月にかけて,京都市内の2ヵ所の小児科定点医療機関で採取した患者(0〜14歳)の咽頭ぬぐい液を検体としてM.pnの培養検査を実施した。

 選択増菌培養にはメチレンブルー,フェノールレッドおよびグルコースを添加した二層培地を用い,37℃で4〜5日培養した後,PPLO寒天培地に塗抹し,湿潤条件下で7日間好気培養した。以上の操作を3回繰り返し,分離率の向上をはかった。発育した集落は,弱拡大で観察し,ニワトリ血球吸着試験,ヒツジ血球溶血試験等により同定した。

 図に1988年7月から1989年2月までのM.pnの分離状況を示した。7月および8月に計34検体を検査したが,陽性例はなかった。ところが,9月には11例中6例でM.pnが分離され(分離率55%),10月は5例中4例(80%),11月は12例中12例(100%)と最高に達した。その後,12月は14例中12例(86%),1989年1月は13例中8例(62%),2月は9例中4例(44%)と分離率は漸次低下している。この分離状況の推移は,京都市における異型肺炎の患者発生状況の推移と並行している。年齢別の分離率は,5〜9歳の年齢層で25例中15例からM.pnが分離され,分離率は60%と他の年齢層と比較し特に高かった。これは,これまでの報告事例とも一致した。

 更に,今回のM.pnの流行のもう一つの特徴は,12月中旬以降Inflとの重複感染例が多数みられたことである。すなわち,Inflが検出された12月13日以降,1989年2月までに検査した咽頭ぬぐい液33例中11例でInflとM.pnとの重複感染が認められた。この理由として考えられるのは,今年がM.pnの流行年に当たり,Infl流行期前の10月,11月にすでにM.pnが主に学童間にかなり侵淫していたためと考えられる。



京都市衛生研究所


肺炎マイコプラズマの分離状況





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