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Vol.10 (1989/6[112])

<特集>
ヘルパンギーナ 1988


 1988年のヘルパンギーナの流行は,全国的集計でみると立ち上がりが例年よりやや遅れた。流行は例年同様四国,九州から始まり,7月に入って近畿,関東,東海,東北に拡がり29週をピークとして一端下降したが,34週に再び小さいピークとなった。その後も報告がつづき,10月末に流行閑期のレベルに戻った(図1)。都道府県別にみると各地のピークは27〜39週に分散し,はっきりと二峰性になったところ(秋田,山口)もあった。29週のピークは定点当たり3.09人,1988年の定点当たり年間報告数は34.59人でともに事業開始以来最低であった(表1)。

 ヘルパンギーナ患者の年齢別割合は,多い順に1歳,2歳,3歳,0歳,4歳で,例年通り4歳以下が86%(前年は85%)と大部分を占めた(表2)。

 1988年にヘルパンギーナと診断されたものから検出されたウイルスは458で,コクサッキーA(CA)10,CA2,CA4が上位を占めた。CA2〜6,10型では検出数全体の59〜100%がヘルパンギーナと診断された。この他には1988年に流行したCA16分離例536中24例,エコー18分離例915中12例がヘルパンギーナと診断された。CA10は1984年(4年前)に大流行し,CA2は1983年と85年に小流行した。CA4は毎年相当数が検出されているが,1987年に増加した。

 ヘルパンギーナ患者からのウイルス検出状況は型によってやや差がみられた。月別にみると,CA10とCA4は7月,CA2は9月をピークとして検出された(表3)。地域別にみると,CA10は19都府県市,CA2は16都府県市,CA4は10県市で検出された。そのうち長野,静岡,滋賀ではCA10,2,4の3種が,神奈川他5都府県市ではCA10,2の2種,島根,鳥取,高知ではCA10,4の2種が検出された。

 上位3つの型の検出例の年齢は4歳以下が76〜87%を占めた(表4)。

 ヘルパンギーナ患者の臨床症状として発熱,上気道炎,口内炎以外に胃腸炎がCA4で8例,その他の型で6例,手足口病様症状がCA10と16に各1例,角結膜炎がCA16で1例,髄膜炎がCA4で1例に報告された。

検体の種類をみると,ヘルパンギーナ患者458例中鼻咽喉からの分離報告は402例,便からは59例であった(表5)。

 CAとHSV1は乳のみマウスおよび/または細胞を用いた培養で,それ以外のウイルスは細胞培養で分離された。型別にみるとマウスと細胞の割合はCA10で125と14,CA2で102と15,CA4は66と6,CA16は10と18であった。CAの中で16型のみが細胞での分離報告数がマウスを上回った。

 1989年5月末まで,ヘルパンギーナ患者からのウイルス検出報告は2月にCA4,CA6,HSV1各1例,4月にCB5が1例のみで,まだ流行の動きはとらえられていない。



図1.ヘルパンギーナ患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
表1.年別ヘルパンギーナ患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
表2.年齢群別ヘルパンギーナ患者発生状況(1988年)(感染症サーベイランス情報)
表3.ヘルパンギーナと診断されたものからの月別ウイルス検出状況(1988年)
表4.ヘルパンギーナと診断されたものからの年齢別ウイルス検出状況(1988年)
表5.ヘルパンギーナと診断されたものの検体の種類別ウイルス検出状況(1988年)





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