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日本では1987年秋から西日本を中心に季節はずれの手足口病の流行があった。年が明けても中国・四国でなお流行の余波が残り,1988年1〜2月の全国の週当たり一定点当たり患者報告数は,サーベイランス開始以来この時期としては最高となった。その後いったん低下したが,第15週からは例年どおり流行が立ち上がり,7月にピークとなった(図1)。
一定点当たり年間患者報告数を年別にみると(図2),1988年は全国集計では56.9人と,1982年(72.8人),1985年(62.7人)に次ぐ規模であった。ブロック別では,北海道は1982年以来最高の流行であったが,九州・沖縄は1987年が最高で88年は減少した。関東甲信越は1987,88年ともに流行が小さかった。その他の地域(東北,東海・北陸,近畿,中国・四国)は1988年に増加して,1982年,1985年と同程度となった。都道府県別では高知,鳥取,三重,岩手,山口,福井,島根,青森,北海道の一定点当たり年間患者報告数が100人を越えた。
患者の年齢は1歳をピークとして低年齢層が中心であり,年齢構成は1987年とほぼ同様であった(表1)。
1988年に手足口病症状のあったものから検出されたウイルスとして,1989年6月までに報告されたのは616で,内訳はCA16が465,EV71が50,CA10が32,エコー18が29などであった。エコー18は1988年に大流行し,0〜2歳に発疹症,3歳以上の小児に髄膜炎が多発した。1988年の検出総数991のうち29に手足口病が報告された。CA16は1987年秋から引き続き手足口病患者発生と並行して検出され,1988年の検出報告総数545のうち465(85%)に手足口病が報告された。EV71は1983年に流行した後,1985年〜1988年は夏から秋にかけて毎年検出されている。1988年の検出総数84のうち50(60%)に手足口病が報告された。
CA10は1984年夏に大流行して以来,4年ぶりに1988年7月をピークとして流行した。主な疾病はヘルパンギーナである。1988年の総検出数231のうち32(14%)に手足口病が報告された。
ウイルスの検出状況を住所地別にみると,CA16は1月から中国・四国,近畿などで検出が続き,6〜7月をピークに34道府県市で検出された(表2)。EV71は長野で多く検出されたほか,6県で少数が検出された(表3)。CA10は7月をピークに8県で検出された。(表4)。
1988年に手足口病から検出されたCA16は465例で,このうち鼻咽喉から385,皮膚病巣から75,便から39が分離された。同じくEV71は50例中鼻咽喉から46,皮膚病巣から4が分離された。CA10は32例中鼻咽喉から29,皮膚病巣から2,便から1が分離された。エコー18は29例中便から20,鼻咽喉から13,尿から1が分離された。
CA16は465例中404が細胞,92がマウス,CA10は32例中3が細胞,30がマウス,EV71,エコー18は全例が細胞で分離された。
CA16,EV71,CA10は1〜2歳を中心に検出され,エコー18は0歳からの検出が多かった。
1988年に検出されたCA16の545例中3例,EV71の84例中16例に髄膜炎が報告され,うちCA16の1例,EV71の2例が手足口病との合併例であった。CA10による髄膜炎の報告はなかった。EV71に髄膜炎が多い傾向はこれまでの流行と同様である
(本月報97号参照)。
図1.手足口病患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
図2.年別ブロック別手足口病発生状況
表1.年齢群別手足口病患者発生状況(1988年)(感染症サーベイランス情報)
表2.手足口病報告例からの月別・住所地別CA16ウイルス検出状況(1988年1月〜12月)
表3.手足口病報告例からの月別・住所地別EV71ウイルス検出状況(1988年1月〜12月)
表4.手足口病報告例からの月別・住所地別CA10ウイルス検出状況(1988年1月〜12月)
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