HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.10 (1989/8[114])

<特集>
赤痢 1987〜1988


伝染病予防法に基づいた赤痢(アメーバ性を含む)の届出患者数は1970年代半ばまでに急速に減少し,以後1,000人前後で横ばいである (第8巻10号参照)。 1987年の届出患者数は1,275人で,うち細菌性が1,185人,アメーバ性が90人であった。アメーバ性赤痢は1980年以後増加傾向にあり,1980年25人から1985年137人に増えたが,1986年130人,1987年90人と減少した。感染地域別では国内感染が約半数を占める(表1)。国外の約9割はアジア地域である。国別にみるとインド177,タイ67,インドネシア52が上位を占めている。年齢群別では細菌性赤痢は9歳以下と20〜39歳に2つのピークがあり,前者は国内での集団発生,後者は海外旅行者の年齢のピークを反映している。アメーバ性赤痢は19歳以下と70歳以上が少ない(表2)。男女別では細菌性赤痢がほぼ同数であるのに対し,アメーバ赤痢は約8割が男性であった。

図1に1983年1月から1989年5月までの地研・保健所における月別赤痢菌検出状況を示した。全体における大きなピークはおおむねソンネ赤痢菌の国内集団発生のピークと一致しているが,フレクスナー赤痢菌による小さなピークもみられる。1987年1月から1989年5月までに地研・保健所から報告された集団発生事例を表3に示した。

表4に1987年および1988年に地研・保健所と13都市立伝染病院で検出された赤痢菌の群別検出数を示した。志賀赤痢菌およびボイド赤痢菌は主に輸入例から検出され検出数も少ない。フレクスナー赤痢菌は検出数,輸入例の割合とも最近はほぼ一定している。ソンネ赤痢菌は国内での集団発生が多かった1986年に比べ検出数は1987,1988年とも減少したが,輸入例は増加したため輸入例の割合が両年とも高かった。

1987,1988年の分離株について伝染病院で行われた薬剤感受性試験の成績によると,クロラムフェニコール,テトラサイクリン,カナマイシン,アンピシリン,ナリジキン酸の5剤について検査された492株中,いずれかの抗生剤に耐性を示したのは387株(78.7%)であり,これは1986年の86%に比べ減少した。また,表5に個々の薬剤に対する耐性率を示した。国内例からの分離株より輸入例からの分離株の方が耐性率が低い傾向は変わっていないが,輸入例からの分離株において,オフロキサシンや,ノルフロキサシンのようなピリドンカルボン酸系の薬剤に対しても耐性株が出現していることが注目される。



表1.感染地域別赤痢患者数,1987年(伝染病統計)
表2.年齢別赤痢患者数,1987年(伝染病統計)
図1.月別赤痢菌検出状況(地研・保健所集計)
表3.赤痢発生事例 1987年1月〜1989年5月
表4.群別赤痢菌検出状況
表5.伝染病院において分離された赤痢菌の薬剤感受性試験成績(1987−1988年)





前へ 次へ
copyright
IASR