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Vol.10 (1989/12[118])

<通知>
乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチンの接種について


平成元年10月25日

健医感発第93号

各都道府県衛生主管部(局)長殿

厚生省保健医療局

結核・感染症対策室長



標記については,昭和63年12月19日付健医感発第93号結核・感染症対策室長通知により実施しているところであるが,この度公衆衛生審議会伝染病予防部会予防接種委員会より別添のとおり意見が出されたので,これに基づき,今後,乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチン(以下「MMRワクチン」という。)の使用に関し下記事項を留意のうえ実施されたい。

 なお,下記1,2の調査結果が判明次第,再度専門家の意見を聞き当面の措置を検討する予定である。



1.MMRワクチン接種後の無菌性髄膜炎患者の実態を把握するため,検体の送付についての手順を別紙に定めたので,今後これに沿って実施されたい。

2.また,MMRワクチン接種後の患者の発生状況について,「MMR・おたふくかぜワクチン接種後の無菌性髄膜炎及び類似疾患の発生について」(平成元年10月13日付事務連絡)の規定に従って,10月末日までの状況につき調査し,調査の結果を11月20日までに必着するよう送付されたい。

なお,今回の調査では市町村毎の接種対象年齢についても調査することとし,調査に当たっては可能な限り正確さを期されたい。

3.なお,上記調査結果が判明するまでの間,おたふくかぜの自然流行の状況を勘案しつつ,MMRワクチン接種の実施についても慎重を期されたいこと。



(別紙)

MMR・おたふくかぜワクチン接種後の無菌性髄膜炎患者に対する検査について



1.目的

 公衆衛生審議会予防接種委員会の意見に従い,おたふくかぜ(MMR)ワクチン接種後の発生状況について調査を行う。

 2.費用

 当面行政検査として行うこととする。

(「ウイルスの行政検査について」(昭和42年10月20日衛防第50号)を参照のこと)

 3.検査対象

 MMR及びおたふくかぜワクチン接種後2ヶ月以内に発生した無菌性髄膜炎患者の髄液から分離されたおたふくかぜウイルス。

 4.検体の流れ

 以下のいずれかによることとされたい。

 (注)検体の送付については,保健所等関係機関の協力により,円滑に実施されるよう指導されたい。

 5.文書の流れ

 (1) 予研への行政検査依頼

 以下のようにされたい。

検査の依頼及び検体の送付については「ウイルス行政検査について」(昭和42年10月20日衛防第50号)のとおりとするが,検体送付票については別添1(略)の様式を使用することとする。

 なお,都道府県は,検体送付票(写しで可)を,ウイルス行政検査依頼書とともに厚生省保健医療局長あてにも送付のこと。

 (2) 情報還元

 6.医療機関への周知徹底

 貴下市町村を通じ,関係医療機関へも周知徹底を図られたい。

 なお,別添2に医療機関あて送付文章を例示したので,参考とされたい(略)。



別添

MMRワクチン及びおたふくかぜワクチン接種後の無菌性髄膜炎について(意見)

平成元年10月25日

公衆衛生審議会伝染病予防部会

予防接種委員会



 当委員会は,MMRワクチン及びおたふくかぜワクチン接種後の無菌性髄膜炎について審議を行い,以下のとおり意見をとりまとめた。



1.都道府県からの報告例の中には,ワクチン由来とは考えにくいものも含まれており,至急PCR法によるスクリーニング検査等を行い,正確な発生頻度の把握を行う必要があり,その結果を踏まえて再度委員会を開催し,当面の措置を検討する必要があること。

2.そのためには,患者の髄液等が円滑に国立予防衛生研究所に送付されるよう手順を定め,直ちに都道府県に指示する必要があること。

3.これまでのところ,都道府県等から報告された無菌性髄膜炎患者と思われる者の中で,予後不良なものはないが,今回の調査によるとMMRワクチン接種後,概ね数千人〜3万人に1人の割合で無菌性髄膜炎の発生している可能性があり,看過し得ないこと。

4.なお,前記1の結果が判明するまでの間,麻しん,おたふくかぜともに流行がおさまりつつある事を勘案しつつ,MMRワクチン接種を慎重に行う必要があると思われること。



参考資料

 ムンプスウイルスの検体分離のための検体取扱法



 ムンプスウイルスの分離検査のためには,一般に唾液,咽頭ぬぐい液,髄液などを採取するが,本事業は主として,おたふくかぜワクチン及びMMRワクチン接種後に髄膜炎を発症した症例を対象としてウイルス検査を実施するため,分離用材料は髄液とする。

1.検体の採取方法

 (1) 発病後できるだけ早期(5日以内)に2〜3mlの髄液を採取して,密封できる適当な滅菌容器*に入れる。

 (2) 操作は,できるだけ無菌的に行う。

 (3) 患者氏名,検体名,採取年月日を鉛筆で記入した**ラベル(布バンソウコウがよい)を検体容器にはり付ける。

  *スクリューキャップ付ポリプロピレン製容器が望ましい。

 **ドライアイス−アセトンで凍結する時,記入した字が有機溶液で消えないよう注意する。

2.検体の保存方法

 (1) 短時間の保存であれば,氷冷(冷蔵庫)して保存する。

(2) 直ちに検査機関に届けられない場合は,ドライアイス−アセトン***中につけて急速に凍らせたあと,−40℃以下で保存することが望ましい。

 ***ドライアイスを使用する場合は,CO2ガスが容器内部に侵入するのを防ぐため,密栓し,ビニールテープでシールする。

3.その他

 (1) 検体を採取した時は,速やかに都道府県の衛生研究所又は,保健所にその旨連絡する。

(2) 数時間以内に検査機関に着く場合は,容器を氷漬けにして運ぶ。

凍結保存した検体はドライアイスにつめ,凍結状態で検査機関に送付する。

 (3) 検体提出時には,検体送付票(略)に必要事項を記入する。











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