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エンテロウイルスは毎年流行の型が入れ替っているが,1989年夏は特定の型の全国的流行はなく,かわりに多種類の型が局地的にそれぞれかなりの流行をおこしたのが特徴的であった。
12月末現在までに報告された1989年のエンテロウイルスは2,314株で,エコー30が421(18.2%),コクサッキーA4が294(12.7%),コクサッキーB5が250(10.8%),エコー4が249(10.8%),エコー11が226(9.8%),コクサッキーB4が226(9.8%),コクサッキーA9が127(5.5%)と多彩である(図1)。
地域別では,エコー4(4〜6月)とエコー30(7〜9月)が鳥取で,コクサッキーA4(6〜7月)が島根,神奈川,奈良で,コクサッキーA9(6〜7月)が愛知で多数検出された。一方,全国的散布をみるには報告地域数が指標になる。コクサッキーB4(6〜8月)が37県市で,エコー11(6〜8月)が30県市で,コクサッキーB5(5〜7月)が26県市で検出された(表1)。
エコー4は過去10年間以上めだった流行はなかった。エコー30は1983年に全国流行した後,1986年に福島で局地的流行があった。コクサッキーA4は毎年一定レベル以上が検出される型で,1987年は全国的に分離数が増加した。コクサッキーA9,B4は2〜3年周期で検出数が増減している。エコー11は1984年以来5年ぶりに増加した。コクサッキーB5は1985年に大流行,1987年に小流行した後,本年再び増加した(表2)。
エンテロウイルスが検出された検体は,2,314株中鼻咽喉材料が最も多く1,600,ついで便759,髄液306,眼ぬぐい液10,皮膚病巣と尿各5,その他1であった。検出はコクサッキーA2,A8型では全例,コクサッキーA10,B2,B4型,エンテロ71では一部が哺乳マウスで分離された。他はすべて培養細胞を用いて分離されている。
エンテロウイルス検出例の年齢は1歳をピークに低年齢が多く,0〜2歳が40.8%(868/2,128)を占めた。しかし,髄膜炎患者からの検出例では3歳以上が多く76.2%(525/698)を占め,特にエコーでこの傾向がめだった(表3)。これに対し発疹症やヘルパンギーナの症例からの検出は0〜2歳の割合が高く,それぞれ65.1%(166/255)および63.0%(223/354)であった。
今夏,沖縄県と鳥取県で無菌性髄膜炎患者が多発し,感染症サーベイランス情報における11月までの一定点当たり累積患者報告数はそれぞれ199.00,103.70である。全国平均は8.87,その他の県・市は36.84以下であるから,この2県の数字は群を抜いている。これまでに鳥取県からは髄膜炎患者からの検出としてエコー4(164),エコー30(165)およびムンプスウイルス(17)が報告されている。
表1.住所(県・政令市)別エンテロウイルス検出状況1989(1989年12月末現在報告数)
図1.エンテロウイルス検出状況 1989年
表2.年別エンテロウイルス検出状況 1980〜1989年
表3.エンテロウイルス検出例の年齢別臨床症状 1989年
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