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Vol.11 (1990/2[120])

<通知>
乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチンの接種について


健医感発第112号

平成元年12月28日

各都道府県衛生主管部(局)長殿



 標記については,昭和63年12月19日付健医感発第93号結核・感染症対策室長通知により実施しているところであるが,この度公衆衛生審議会伝染病予防部会より別添のとおり意見が出されたので,これに基づき,乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチン(以下「MMRワクチン」という。)の使用に関し,より安全なワクチンが開発されるまでの間,保護者からの申し出があった場合に限り,麻しんの定期の予防接種時にMMRワクチンを使用することとしたので,今後下記事項を留意の上実施されたい。



1.麻しんの定期予防接種時には麻しんワクチンを使用することを原則とするが,保護者からの申し出によりMMRワクチンを使用した場合にも,その予防接種法上の取り扱いは,従来通り麻しんワクチンを使用した場合と同様とされたい。

2.MMRワクチンの効果,副反応等について周知を図るため,別紙「MMRワクチンの接種について」(略)の内容を保護者に事前に周知するための広報活動を行うよう貴管下市町村を指導されたい。

 また,予防接種法に規定された予防接種による健康被害に対する救済制度についても,周知が図られるよう貴管下市町村を指導されたい。

3.保護者にMMRワクチンの接種機会を提供するため,医師会等関係機関と協議しつつ,MMRワクチン接種を実施する医療機関ができるだけ多く確保されるよう,貴管下市町村を指導されたい。

(別添)

 乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチンの接種等について(意見)

平成元年12月20日

公衆衛生審議会伝染病予防部会

 当部会は乾燥弱毒麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチン(以下「MMRワクチン」という。)の接種方式等について審議を行い,以下のとおり意見を取りまとめた。



1.MMRワクチンについて

 MMRワクチンの接種については,昭和63年8月5日に公衆衛生審議会伝染病予防部会の意見が出され,厚生省は,予防接種実施規則の一部を改正する省令(昭和63年厚生省令第64号)により,麻しんの定期の予防接種に当たっては,同時に風しん及びおたふくかぜの予防接種を希望する旨の申し出があったときはMMRワクチンを使用することができることとした。

 MMRワクチン接種後に起こるおたふくかぜウイルスによると思われる無菌性髄膜炎については,これまでその発生はごくまれであり,大部分が野生株による自然感染と思われていた。しかし,PCR法を使ったおたふくかぜウイルス株の鑑別法の開発を背景として行われたその後の調査により,MMRワクチン接種後の無菌性髄膜炎は,数千人に一人という従来考えられていたよりはるかに高い確率で発生していることが明らかとなった。

 これまでの調査では,その症状はいずれも軽度であり,後遺症を残す恐れもないと思われる。一方,おたふくかぜに自然感染した場合には数十倍から数百倍の高い確率で無菌性髄膜炎が発生するほか,脳炎等の合併症や聴力障害等の後遺症を伴うことがあり,おたふくかぜによる死亡者が毎年数名報告されている。

 以上のことから,一般的にはMMRワクチンはおたふくかぜに自然感染した場合と比較すると効果のあるワクチンといえるが,MMRワクチン接種後の無菌性髄膜炎発生等の点から見れば,今後のMMRワクチンの取扱いについては,当部会としては,次のようにすることが適当であるとの結論に達した。

(1)麻しんの定期の予防接種時にMMRワクチンを接種することについては,麻しんワクチンを単独で接種する場合に比べ,無菌性髄膜炎の発生頻度は高いものの,おたふくかぜの自然感染の場合より合併症や聴力障害等の後遺症の発生の確率が低いことから,これまでどおり「麻しんの定期の予防接種時に,同時に風しんおよびおたふくかぜの予防接種を希望する旨の申し出があったときは,MMRワクチンを使用することができる」こととしておく必要がある。

(2)しかしながら,MMRワクチン接種後に数千人に一人の割合で無菌性髄膜炎が発生する可能性がある状態では,その接種を従来のように積極的に進めていくのではなく,国民がMMRワクチンの効果および副反応等について理解した上で接種をするか否かを選択できるような体制を整える必要がある。

 具体的には,より安全なワクチンが開発されるまでの間,保護者からの申し出があった場合に限り,麻しんの定期の予防接種時にMMRワクチンを使用することが適当である。

(3)なお,MMRワクチンの取扱いに当たっては,今後とも以下の点に留意して行う必要がある。

 @保護者からの申し出があった場合には,麻しんの定期の予防接種時にMMRワクチンを接種することができるようにするため,MMRワクチンの接種機会が確保されるよう,医師会等関係機関と協議しつつ,接種体制を整備すること。

 AMMRワクチンの効果及び副反応等について,一層の周知徹底に努めるとともに,無菌性髄膜炎等MMRワクチン接種後の副反応の発生状況およびおたふくかぜに自然感染した場合の合併症等の発生頻度等についても把握に努め,サーベイランス体制の強化を図ること。

 BMMRワクチンに使用するワクチン株の種類等の検討を含め,より安全なワクチンの供給に努めること。

 C予防接種健康被害救済制度の周知に努めること。

2.コレラ対策について

 コレラ対策については,昭和53年8月11日付衛発第701号厚生省公衆衛生局長・環境衛生局長通知「コレラ防疫対策実施について」により対策が進められてきたが,最近になっても毎年数十名の患者が発生しており,また,ひとたび本年のように大きな集団発生があった場合には,その社会的,経済的影響は他の経口伝染病の比ではない。

 一方,海外との人的,物的交流は増大の一途をたどっており国際化時代に対応した今後のコレラ対策のあり方を検討するためコレラ小委員会を開催する必要がある。



厚生省保健医療局 結核・感染症対策室長





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