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Vol.11 (1990/4[122])

<国内情報>
1989〜90年冬季のインフルエンザ流行状況−山形県


 1989年12月中旬,山形市内の病原体サーベイランス定点医を訪れた患者からA(H3N2)型ウイルスが分離されるとほぼ同時に,日本海沿岸の小学校で今季最初の集団発生(AH3N2型)が確認された。その後漸次全県から小中学校における学級閉鎖の報告が増え,1月下旬をピークに,2月中旬にはほぼ終息するかに見えた。しかし,3月に入り,山形市において再びインフルエンザ様患者が少数ながらも報告され始め,その後上山市および米沢市でも患者が確認され,3月下旬までに16株のB型ウイルスが分離された。学級閉鎖の措置をとらざるをえなかった小学校も少数ながらあった。

 小,中学校からの届出患者数は,A(H3N2)型流行期では,16,548名で,1989年初春のA(H1N1)型流行とほぼ同じような流行規模であったと思われる。次いで発生したB型の流行はさらに小規模であった。3月に入り気温の高い日が続いていることと関連するかもしれない。

 全国の情報によると,A(H3N2)型流行において成人にも患者が多発したことがあるが,本県において,数年続けている患者発生の調査では,昨年(AH1N1型)と比べて,今季特に成人層に患者が多いという傾向は認められなかった。しかし,成人からのウイルス分離率を比べると,昨年のA(H1N1)型流行では子供から効率よくウイルスが分離されたが,成人からは4/38(11%)という低率であった。それに対して今季のA(H3N2)型流行における成人からのウイルスの分離率は25/36(69%)と高率であったことは注目に値する。

 今季のA(H3N2)型流行から50株のA(H3N2)型ウイルスが分離された。その中から地域別に4株のウイルスを選び,抗原性をニワトリ抗血清を用いたHI試験により,ワクチン株(A/四川/2/87)およびA/北海道/20/89株と比較した。調べた全てのウイルスは非常によく似た抗原性を示した(表1)。

 また,現在までに分離された16株のB型インフルエンザウイルスの中から地域別に3株を選び,ニワトリ抗血清を用いたHI試験により,最近のB型のワクチン株と抗原性を比較した。今回の流行から分離された3株のB型ウイルスは,現行のワクチン株であるB/山形/16/88株と類似の抗原性を示した(表2)。



山形県衛生研究所 大山 忍


表1.分離ウイルスの抗原性(AH3N2型)
表2.分離ウイルスの抗原性(B型)





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