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Vol.11 (1990/7[125])

<国内情報>
外国人の結核対策について


平成2年5月16日



 最近,在日外国人特にアジアからの日本語教育施設の就学生の結核り患率の高いことが報告され,我が国の気各区対策上放置できない問題であるとして,その対策を検討するため本委員会が設置された。

 海外からの留学生及び就学生は昭和63年に新規に入国した者だけでも4万人を越え,また,今回法務省でまとめた在留外国人統計によると,滞在就学生として在留している者は約5万人となっており,今後とも増加していくと予想される。

 これら日本語教育施設の就学生に対する患者発見対策,医療対策,正しい知識の普及について検討した結果,実施すべき対策について下記のとおり報告をまとめた。



1.患者発見対策について

 現在問題となっている日本語教育施設については,その多くが学校保健法(昭和33年法律第56号),結核予防法(昭和26年法律第96号)の規定に基づく定期の健康診断を実施する義務がなく,また,実際にもほとんど健康診断を実施していないのが実情である。

 しかし,昨年日本語教育振興協会が設立され(本年2月26日に財団法人化),同協会により日本語教育施設に関する全国的な認識制度が成立されたことにより,入国(就学)ビザの発行はこの制度による認定校に入校する場合のみとなっている。本認定制度の定める基準では,健康診断の実施及び生活指導担当者の設置が示されており,この基準の適切な運用が図られれば,日本語教育施設の経営者等による就学生の健康管理についての制度が整備されることになる。

 しかし,同基準に健康診断の内容が示されていないことや,実際に実施される体制が整うまでにはまだしばらくの期間を要すると考えられることから,本制度が適正に運用されるよう,当該財団法人を通じて日本語教育施設の経営者等に対し,健康診断を実施することの必要性及び就学生が発病した場合に医療機関で受診するよう勧奨すること等について啓発普及を図ること等が必要である。

 また,日本語教育施設のうち,専修学校または各種学校に該当するものについては,結核予防法に規定する定期の健康診断を実施するよう日本語教育施設の経営者等を指導することが必要である。

2.医療対策について

 結核治療は,適正な期間,中断することなく規則的に実施することが必要である。

 しかし,日本語教育施設の就学生の中には患者として発見され医療機関に受診した場合であっても,経済的な問題及び言語の問題により受診を中止し更に病状を悪化させることが危惧される。

 このことは,将来的に国内の結核対策を充実する上で看過できない問題となることも考えられることから,@日本語教育施設の経営者等を通じ,就学生が入学時に国民健康保険等に加入するよう啓発普及を図ること,A各都道府県において,就学生が使用する主要言語ごとに,患者の受け入れ可能な医療機関のリストを作成し,保健所に配布すること,B就学生が使用する主要言語ごとに,結核医療等に関するマニュアルを作成し,関係医療機関に配布すること,などにより,経済的及び言語による問題のため就学生に対する医療が中断されることがないよう努力しなければならない。

3.相談体制について

 日本語教育施設における就学生は,日本の結核対策についての情報が乏しいこと,言葉が通じにくいこと等から,健康状態に不安を持っていても健康診断等の受診を行わないことが多いといわれている。

 このことから,英語以外の言葉で相談等が行える体制についても整備を図るとともに,就学生等に対し結核に関する基本的な知識を普及するため,結核の早期発見等の必要性及び日本の結核対策の概要等についてのポスターやパンフレット等を作成し,広く配布する必要があると考えられる。



 公衆衛生審議会結核予防部会委員

青木 正和 (財)結核予防会結核研究所長

青柳 昭雄 国立療養所東埼玉病院長

朝日 俊弘 全日本自治団体労働組合中央執行委員

磯江驥一郎 国立療養所中部病院名誉院長

佐分利輝彦 社会保険審査会委員

實川 浩  千葉県野田保健所長

田寺 守  東京証券健康保険組合診療所所長

初鹿野 浩 東京都東久留米保健所長

堀野 豊夫 全国厚生農業共同組合連合会会長理事

芳賀 敏彦 国立療養所東京病院名誉院長

矢野 亨  (社)日本医師会常任理事

柳川 洋  自治医科大学教授



公衆衛生審議会結核予防部会


在日外国人結核登録集計結果





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