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病原微生物検出情報において1981〜90年の10年間に眼から分離されたウイルスの報告数は3,955で,さらに,1988年以降クラミジア・トラコマチスが10例報告された(表1)。アデノウイルスが89.5%(3,539例)を占め,これ以外では単純ヘルペスウイルスが5.6%(224例),エンテロウイルスが4.5%(177例)である。型別にみると,分離報告が最も多いのはアデノ3型,ついでアデノ4型および8型で,全検出報告数3,965のそれぞれ24.9%,20.9%および16.6%を占めた(図1)。
総分離報告例に対する眼からの分離例の割合が高い型はアデノ8型,アデノ37型,アデノ22型,コクサッキーA24型(CA24)およびエンテロウイルス70型(EV70)で,いずれもこの期間中の眼からの分離例の割合が94%以上を占めた。ついでアデノ19型およびアデノ4型がそれぞれ87.3%および68.5%を示した。これ以外は低率となり,アデノ3型およびアデノ11型はそれぞれ21.8%および19.3%である。単純ヘルペス1型(HSV1)の眼からの分離例の割合は6.6%であった。EV70またはCA24以外のエンテロウイルスが眼から分離される頻度は極めて低い。
年別分離報告数(表1)ではアデノ3型が1983/84年および1986/87年に増加した。一方,アデノ4型は1984/85年に増加してアデノ3型を上回る分離数を記録したが,その後は現在までめだった増加がみられない。アデノ8型およびアデノ19型もまた1984年に分離数が最も多かった。EV70は1984年以降分離報告がなく,代って1985年からCA24が報告されている。
厚生省感染症サーベイランスにおいて収集される3眼科疾患の患者発生パターン(図2)によると,咽頭結膜熱と流行性角結膜炎は共に1984年にめだって大きい発生を示した。これはウイルス分離状況から,この年にアデノ3型と4型の両型の流行が重なり,さらにアデノ8型および19型も増加したことによると説明される。
各臨床診断名別に眼から分離されるウイルス(表2)をみると,咽頭結膜熱と診断された患者からの分離ではアデノ3型が63.9%(274例)を占め,ついでアデノ4型が18.1%(78例)であった。流行性角結膜炎から分離される主なウイルスとしては,アデノ4型,3型,8型,19型がそれぞれ25〜10%報告されている。急性出血性結膜炎と臨床診断された例では108中EV70またはCA24が分離されたのは37.0%(40例)で,これ以外はアデノ3型,4型,さらに他のアデノウイルスが分離されている。CA24は流行性角結膜炎と診断された例からの分離報告が多く,また,他のエンテロウイルスはいずれの臨床診断名でも分離がみられる。
アデノウイルスの分離のピークは夏季であるが,年間を通じて常に相当数の分離が報告される。CA24は7〜10月に分離された。
眼からのウイルス分離が報告される例はほとんどすべてのウイルスで20〜30歳代が最も多い。一方,アデノ3型は9歳以下の方が多く,分離頻度の高いアデノ3型,4型および8型では分離年齢の分布が9歳以下と20〜30歳代の両方にピークをもつ2峰性となる(表3)。
眼と同時に同一人の他の材料から同じウイルスが分離される例がエンテロ,アデノ,ヘルペスのいずれのウイルスにもみられる。鼻咽喉材料との複数分離が最も多く,また3種以上の材料からの分離が33例報告された。
表1.年別眼ぬぐい液からのウイルス検出状況 1981〜1990年(1991年2月18日現在の集計)
図1.眼ぬぐい液からのウイルス分離数 1981〜1990年
図2.咽頭結膜熱,流行性角結膜炎,急性出血性結膜炎患者発生状況(厚生省感染症サーベイランス情報)
表2.臨床診断名別眼ぬぐい液からのウイルス検出状況 1981〜1990年
表3.年齢別眼ぬぐい液からのウイルス検出状況 1981〜1990年
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