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大分県における無菌性髄膜炎(AM)の流行の最盛期は例年6月〜8月であり,冬季は患者が減少する傾向にある。しかし,本県の感染症サーベイランス情報によると,1990年の秋から1991年の春にかけて例年より多い患者数が報告された。
このため,多くのAMの検査依頼があり,HeLa,BGM,Vero,RD−18Sの4種類の細胞を用いてウイルス分離を行った。ウイルスの同定には市販の抗血清を使用したが,エコーウイルス30型(E30)はやや同定が困難であったため,予研から分与された50単位の抗血清を最終的に使用した。
1990年の6月から1991年の6月までに,78人のAM患者からウイルスが検出された。主なウイルスとしてE30が36人(46.2%),ムンプスが10人(12.8%),コクサッキー(C)B3とCB5が各9人(11.6%),CB1が5人(6.4%)から検出された。1990年の夏季にはCB3,CB5,CB1が多く分離されたが,10月以降はE30が主流となり,分離ウイルスの71.7%を占め,毎月1〜7株分離された。E30が検出された検体の種類は,髄液29人(72.2%),咽頭ぬぐい液9人(25%),うがい液6人(16.6%)で,この中には髄液およびうがい液の両方から検出された者5人(13.9%),髄液および咽頭ぬぐい液の両方から検出された者3人(8.3%)が含まれる。E30を分離した細胞は,RD−18Sが35件(97.2%),HeLaが1件(2.8%)であった。
患者の年齢分布は,0〜4歳19.4%,5〜9歳58.3%,10〜14歳8.3%,15歳以上13.9%で,5〜9歳の年齢層で患者が最も多かった。症状は髄膜炎のほか発熱,嘔吐,頭痛,口内炎などが報告されている。
1991年の7月になりAMの検査依頼が増加し,現在ウイルス検索中であるが,大部分がE30であり,今季のAMの主原因ウイルスになると思われる。
大分県衛生環境研究センター
小河正雄 北村雅子 小野哲郎
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