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病原体情報においては1985年以降年間600〜700例の単純ヘルペスウイルス(HSV)の検出が報告され,特にサーベイランス定点で採取された検体から地方衛生研究所で検出されるHVS報告数が増加している(表1)。型特異的単クローン抗体を用いる蛍光抗体法キットの普及によって型別分離報告が増加している。
HSVが検出される疾病は多彩であり,大きく上気道感染と性感染症関連例に分けられる。1987年1月〜1991年7月に検出されたHSV2,773について検体の由来(表2)をみると,1型は鼻咽喉からの検出が62%,眼ぬぐい液から4%報告されたのに対し,2型では鼻咽喉からの検出報告は8例のみである。髄液から1型3,2型2,型不明4,脳材料から1型1が分離された。
鼻咽喉・口腔由来検体のHSV検出例1,435(男684,女744)の年齢分布をみると(図1),男女ともに1歳をピークとして低年齢が多いが,20〜30歳代でもかなりの検出があり,さらに高齢者まで幅広い年齢から検出される。これらの例の臨床診断名としてはアフタ性口内炎およびヘルパンギーナ,次いでヘルペス口内炎,インフルエンザ様疾患などが多い。臨床症状として発熱,上気道炎,口内炎が高率にみられる他,多彩な症状が報告されている(表3)。
「陰部ヘルペス」については,1987年1月から厚生省感染症サーベイランスに性感染症定点が新設され,患者数が月単位で報告されている。一定点当たり月間患者報告数は0.66〜0.97で季節性はみられない。一定点あたり年間患者報告数は1987年9.47,1988年8.60,1989年9.17,1990年9.55と一定している。患者の性・年齢分布も毎年ほぼ同様である。表4は1990年の患者報告の年齢分布である。男は25〜34歳を中心に成人に幅広く分布しているのに対し,女では20〜29歳が4割を占める。24歳以下では女の方が多いが,25歳以上では男が多く,性比は35〜44歳で最も大きい(2.7)。
臨床診断名として「陰部ヘルペス」が報告された例は,1987年1月〜1991年7月ではHSV検出例の34%(500/1,491),うち型別では1型検出例の17%(165/988),2型検出例の95%(315/333)であった。これを1990年以降についてみても割合は変わらず,同じく33%(167/506),16%(59/375),96%(107/112)であった。一方,検体の由来では1990年以降に検出されたHSVの25%(205/830),うち1型の12%(73/594),2型の84%(118/140)が陰部由来であった(表2再掲)。
1990年以降にHSVが検出された「陰部ヘルペス」例(検体の由来から特定された例を含む)は男53(1型12,2型41),女159(1型66,2型79,型不明14)であった。男は2型が多いのに対し,女は1型と2型の差が小さい。HSV検出例の年齢分布は患者報告の年齢分布を反映している。0〜4歳の1例(図2)は2歳女児から1型が分離された報告例である。
1987年以降の報告のうち,0〜9歳で2型分離例が10例報告された。8例は0歳児,うち5例は水泡を含む皮膚病巣,1例は鼻咽喉,他の2例は血液からの分離であった。その他は1歳児の鼻咽喉および9歳の髄膜炎患者の髄液からの分離であった。(1980〜86年のHSV検出状況の詳細は
本月報Vol.8,No.4参照。)
表1.年別単純ヘルペスウイルス(HSV)検出状況(1980〜1991年)
表2.検体の種類別単純ヘルペスウイルス検出状況(1987年1月〜1991年7月)
表3.鼻咽喉・口腔由来単純ヘルペスウイルス(HSV)検出例の臨床症状(1987年1月〜1991年7月)
図1.鼻咽喉・口腔由来単純ヘルペスウイルス(HSV)検出例の年齢分布(1987年1月〜1991年7月)
図2.陰部ヘルペス由来単純ヘルペスウイルス(HSV)検出例の年齢分布(1990年1月〜1991年7月)
表4.陰部ヘルペス患者の性・年齢分布,1990年(感染症サーベイランス情報)
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