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Vol.12 (1991/11[141])

<特集>
手足口病 1990年および1991年


手足口病は夏に流行する小児の疾患で,主な病原ウイルスは3つのエンテロウイルス,すなわちコクサッキーウイルスA16型(CA16),エンテロウイルス71型(EV71)およびコクサッキーウイルスA10型(CA10)である。

1990年夏の手足口病患者発生は第27週にサーベイランス開始以来の週当たり最高値(6.1人/定点)を記録し,さらに秋から冬にかけて流行が尾を引いた。1991年1月以後患者発生は極めて少ない(<0.7人/定点/週)(図1)。

1990年の患者年齢分布では5歳以上の割合が増加した(図2)。これは一般にエンテロウイルスの流行において,規模の大きい流行年は年長児感染の割合が増加する傾向と一致する。

1990年は手足口病の病因としてCA16とEV71が共に流行し,特にEV71の検出数は過去最高であった。1990年の手足口病患者からのウイルス分離報告では両ウイルスとも6,7月がピークで,EV71検出数は8月までCA16を上回ったが,その後減少した(表1,2)。1991年1月以降EV71は福岡県でのみ検出され,一方,CA16は少数ながら分離報告が続いている。4機関でCA10,CA16,EV71の3ウイルスが共に分離され,このうち大分県ではCA10が最も多く報告された。東日本でCA16,西日本でEV71が多い傾向がみられた。

1990年の検出報告中手足口病が報告された例は,CA16:90.5%(314/347),EV71:75.2%(331/440),CA10:13.8%(33/239)である(表3)。

手足口病患者からのウイルス分離はいずれの型でも鼻咽喉からの検出報告が最も多く,また,主に培養細胞によって分離される(表4)。

手足口病の主な病因である3つの型のウイルスについて,1982〜1991年の分離報告数と報告機関数を表3に示した。10年間にエンテロウイルスの検出例を報告した61機関中,CA16の分離は52機関(手足口病からの分離報告は51機関),EV71は48機関(同47),CA10は40機関(同26)から報告された。このように,手足口病のサーベイランスとその病因ウイルスの分離は全国的規模で実施されており,これによってCA16とEV71の伝播が年によって単独または組み合わせで手足口病の流行を引き起こしている状況が把握,確認される。

1990年にEV71感染で,髄膜炎が71例(分離総数の16.1%)報告された。これはEV71による髄膜炎報告数としては最高で,頻度としては1987年18.5%(25/135)に次いで高い。このうち25例は手足口病が髄膜炎と併せて報告された。EV71の手足口病患者は2歳をピークとしている(表5)のに対し,髄膜炎例では0〜5歳の各年齢でそれぞれ6〜12例が報告されている。



図1.手足口病患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
図2.手足口病患者の年齢分布(感染症サーベイランス情報)
表1.手足口病患者からの月別・報告機関別CA16検出状況(1990年1月〜1991年9月)
表2.手足口病患者からの月別・報告機関別EV71検出状況(1990年1月〜1991年9月)
表3.年別CA16,EV71,CA10検出状況
表4.手足口病患者からの検体の種類および検出方法別ウイルス検出状況(1990年1〜12月)
表5.手足口病患者からの年齢別ウイルス検出状況(1990年1月〜12月)





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