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Vol.12 (1991/11[141])

<国内情報>
鳥取県における無菌性髄膜炎の原因ウイルスについて


鳥取県は,生活・経済圏により大きく東,中,西部の3地区に分けられている。

1991年6月中旬頃から,米子市を中心とした県西部地区で無菌性髄膜炎(AM)の流行が認められた。6月中旬から10月上旬の間にAMを疑う例を含む152名から分離材料が得られ,101名(66.4%)からエコーウイルス(E)5型(23名),E9(22名),E30(54名),コクサッキーウイルスB(CB)1型(2名)が分離された。分離用細胞は,RD−18S,FL,Veroの3種類の細胞を用いた。E5,E9はRD-18S,E30はRD−18SとFL,CB1はFLとVero細胞によく感受性を示した。同定は予研から分与されたエンテロプール抗血清を使用し,単味抗血清は予研分与,市販抗血清を併用し同定した。E30は市販抗血清では中和されなかった。E5はbreak through現象を示し,初代では感染価が低く,2代継代後高い感染価が得られる分離株もあった。

AM以外の疾患も含めた患者からのエンテロウイルス分離状況を月,旬別に表に示した。

E5は全国の検出情報では1974年(53株),83年(34株)の流行以来めだった報告はなく,本県においても1982年,1983年に1株ずつ分離されているにすぎない。東部からは現在のところ分離されず,西部と中部での流行となった。E9は1990年に中部地区を中心として流行したが,本年は西部地区のみで,地区をかえて2年連続の流行となった。一方,E30は,他県より流行開始時期が遅く,1989年の流行でほとんど波及していなかった西部地区を中心とした流行となり,10月上旬の検体からも分離されている。E5,30はAM以外の消化器,上気道疾患からも分離され,1ヵ月未満の新生児からの分離が少数ながら認められた。以上のようにE5,E9,E30の3種類のウイルスが主に関与した流行であり,1991年10月現在,E30が継続分離されている。鳥取県においては,全県的な波及はみられず,西部地区を中心に隣接の中部地区へ広がった中規模の流行状況である。



鳥取県衛生研究所 川本 歩 田中真弓 松戸三千代 本田達之助


エンテロウイルスの分離状況(鳥取県)





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