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長野県下のサーベイランス定点において,9月25日に採取した検体からインフルエンザA香港型ウイルスを今シーズン初めて分離した。
患者は須坂市在住の26歳の主婦で,9月23日頃から咳を主症状として発症し,その後発熱(医院受診時39.1℃),全身倦怠を訴え,定点である市内のA医院を受診した。採取された咽頭ぬぐい液をMDCKおよびLLC−MK2細胞でウイルス分離試験を実施した結果,10月14日にA香港型ウイルスを分離した。
分離株(A/長野/400/91)は,昨シーズン予研から配布された標準抗血清A/貴州/54/89に対して1:128のHI価を示した。予研ウイルスリケッチア部ウイルス第三室での今シーズンの標準抗血清による抗原分析の結果(表)によると,昨シーズンの流行株であるA/滋賀/2/91に類似のウイルスであった。
患者の詳しい疫学調査では,発症前の9月下旬に,グアム旅行後の風邪気味の友人と接触しており,友人の臨床症状も患者と同様であったことが判明した。
その後,現在(11月20日)まで同地区および県下でインフルエンザウイルスは分離されていない。患者の疫学調査から,海外からのインフルエンザウイルスの持ち込みも推測されるが,今春の流行後半(4月中旬)に県下で分離したA香港型ウイルスも分離株と抗原的に類似した性状を示しており,今後の動向を注目したい。
長野県衛生公害研究所 宮坂たつ子 西沢修一 小山敏枝
国立予防衛生研究所 石田正年
分離ウイルスの抗原分析
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