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Vol.12 (1991/12[142])

<特集>
インフルエンザ 1990〜1991


日本の1990/91シーズンのインフルエンザの流行はA香港(H)型が主流,さらにB型およびAソ連(H)型をあわせた混合流行であった。

感染症サーベイランスにおけるインフルエンザ様疾患患者は第4週から増加し始め,第10週をピークとして4月に入るまで引き続いた(図1)。

一定点当たり報告数は1990年第40週〜1991年第39週までの累計で109人で,過去3シーズンの同期間の報告数を下回った(1987/88/:179人,1988/89:131人,1989/90:256人)。患者年齢は,流行の大きかった1990年に比べ10〜14歳(26%)の割合が増加し,0〜4歳(20%)の割合が減少した(図2)。

厚生省結核・感染症対策室に報告された学校等における集団発生報告によると,このシーズンの集発患者数は54万人で,1989/90シーズン(107万人)の約半分であるが,1988/89シーズンのAソ連型の流行(21万人)を上回り,1987/88シーズン(57万人)と同程度である。サーベイランスの患者報告が少なかったわりに,集団発生が多かったとみられる。

1990/91シーズンのウイルス分離としては,まずA香港型が12月に横浜市で検出され,1月に関東を主に,2〜3月に全国的に拡がり,2月をピークとして5月までに49都道府県市から1,899株が検出報告された(表1)。B型は1月に岡山,島根,奈良,滋賀で検出され,2〜3月に西日本を中心に拡がり,3月をピークとして6月までに30府県市から499株が検出報告された(表2)。Aソ連型は3月をピークとして1〜6月に24都府県市から245株が検出報告された(表3)。このような3型の混合流行は1980/81シーズン以来である(表4)。患者発生が低調であったにかかわらず,ウイルス分離報告ではA香港型が前半とほぼ同程度に報告された。さらにB型,Aソ連型を加えたインフルエンザウイルス報告数は前年に次いで本報告システム開始以降2番目に多かった。

ウイルスが分離された年齢はA香港型では10〜14歳(54%)が多かったのに対し,B型とAソ連型では5〜9歳(48%および44%)が多かった(表5)。

ウイルスが分離された検体として鼻咽喉材料以外に眼ぬぐい液からA香港型2株,肺気管支からAソ連型1株が報告された。

予研ウイルスリケッチア部ウイルス第3室でフェレット感染血清を用いて実施した1990/91シーズン分離株の抗原分析(表6)によれば,A香港型とB型では1990/91シーズンワクチン株から差異のみられる株が分離されているが,Aソ連型では差異のある株はみられなかった。1991/92シーズンのワクチン株としてA/山形/32/89(H),A/北京/352/89(H),B/バンコク/163/90が選ばれ使用されている。

1991/92シーズンは9月に長野でA香港型1株が検出報告されている (本号参照)



図1.インフルエンザ様疾患患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
図2.インフルエンザ様疾患患者の年齢分布(感染症サーベイランス情報)
表1.月別・住所地別インフルエンザウイルスA香港型検出状況(1990年12月〜1991年6月)
表2.月別・住所地別インフルエンザウイルスB型検出状況(1990年12月〜1991年6月)
表3.月別・住所地別インフルエンザウイルスAソ連型検出状況(1990年12月〜1991年6月)
表4.インフルエンザシーズン別インフルエンザウイルス検出状況(1980年7月〜1991年9月)
表5.年齢別インフルエンザウイルス検出状況(1990年12月〜1991年6月)
表6.1990/91インフルエンザシーズン中に分離された代表株の抗原分析(1991年1〜3月)





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