|
横浜市:A(H1N1)型
横浜市では,年間を通してサーベイランス定点ウイルス調査を実施しているが,この調査から1991年12月9月に市内北東部鶴見区定点の検体よりインフルエンザA(H1N1)型ウイルスを1株検出した。患者は12歳の男児で,38.6℃の発熱と下気道炎の症状が見られたが,ワクチン歴は不明である。
分離ウイルスの抗原性状は,表に示したようにワクチン株A/山形/32/89から大きくずれていた。むしろ,当市で1986年,88年にそれぞれ流行した株に近い性質を示していた。このウイルスが検出される以前の12月6日には,市内中央部に位置する保土ヶ谷区の1幼稚園で集団かぜが発生した。検体の得られた患者は37.5〜38.5℃の発熱と鼻水や咳などの臨床症状を呈していたが,喉の痛みや筋肉痛は見られなかった。また,全員ワクチン歴はなかった。
患者のうがい液からウイルス分離を行ったが,細胞培養初代陰性で,現在継代培養を続行している。なお,回復期血清がそろった時点で,血清学的に感染の有無を確認したい。
ここ数年のインフルエンザの流行状況とあわせて,今季はA(H1N1)型ウイルスが流行の主流を占めるのか,現時点では予測が困難である。今後の調査に期待したい。
横浜市衛生研究所 小島 基義,野村 泰弘,竹内 利江,小林 伸好
川崎市:A(H1N1)型
川崎市では,11月25日,27日に市内南部川崎区の定点にて採取された咽頭ぬぐい液から,今季初めてインフルエンザAソ連(H1N1)型ウイルスを2株検出した。
これらの患者は6歳,4歳の姉弟で,39.4℃,38.2℃の発熱症状を示し,姉は発症の1週間程前に1回目のワクチン接種を受けている。分離ウイルスの抗原分析を予研に依頼したところ,ワクチン株A/山形/32/89に比較的類似した抗原性状であった(表)。
本市では12月19日現在,集団かぜの報告はなく,市内のインフルエンザ様疾患は12月18日(第50週)現在,報告数25,定点当たり0.81で,前週までと比較すると増加傾向にあるものの,まだ流行とは言い難いようである。
川崎市衛生研究所 福田 依美子,春山 長治
鳥取県:A(H1N1)型
鳥取県では,米子市のサーベイランス定点医療機関から得られた2人の急性咽頭炎患者の咽頭ぬぐい液から,今季初めてインフルエンザA(H1N1)型ウイルス2株(A/鳥取/26/91,A/鳥取/27/91)を検出した。1人は米子市在住8歳男子,11月27日発病,同日検体採取,発熱(37.7℃),咽頭発赤,咳の症状があった。他の1人は米子市隣接の岸本町在住7歳男子,11月30日発病,同日検体採取,発熱(39.0℃),他の症状は上記と同様であった。その後,岸本町で12月6日〜7日に小学校5年,2クラスの集団カゼの学級閉鎖(在籍者数73名,患者数56名,欠席者数25名)があった。このうち10人の咽頭ぬぐい液からウイルス分離を試みたところ,インフルエンザA(H1N1)型ウイルス1株(A/鳥取/28/91)を検出した。ウイルス分離にはMDCK細胞を用いた。
分離株2株の予研における抗原分析の結果を表に示した。A/鳥取/27/91も同様の成績であった。
上記以外に未同定株(定点由来2株と前記の集団カゼ由来2株)が検出されており,現在継代培養中である。
本県における集団カゼ発生状況は,12月19日までの累計(県健康対策課調べ)で小学校5校(在籍者数202名,患者数135名,欠席者数65名)である。初発は西部地区であったが,中部および東部地区にも集団発生例があり,県全域に波及した様相である。監視体制を強化し,今後の推移を見守っていきたい。
鳥取県衛生研究所 川本 歩,松戸 三千代,田中 真弓,本田 達之助,石田 一成
横浜市表:A/横浜/67/91ウイルスの抗原性状
鳥取県表:フェレット感染抗血清
|