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仙台市:A(H1N1)型
我々は,年間を通して検査定点より依頼された検査材料からウイルス分離を行っている。本年は,1991年12月19日,21日に市内東部の検査定点で採取された咽頭拭い液から,今季初めてインフルエンザAソ連(H1N1)型ウイルスを2株検出した。
患者は12歳,6歳の男女で,38.6℃,39.8℃の発熱および上気道炎の症状を示し,両者ともワクチン歴は無かった。
ウイルスは発育鶏卵を用い3代継代により分離され,これをさらにMDCK細胞に1代継代し,インフルエンザセンターのキットを用い同定した(表)。本市では,1月中旬現在,集団発生の報告は無く,市内のインフルエンザ様疾患は1月11日(第2週)現在,報告数1であり,未だ流行の兆しはない。
仙台市衛生研究所 佐々木 芳,熊坂 満郎,熊谷 正憲,大堀 均,角田 行
島根県:A(H1)型とA(H3)型
島根県では,1991年12月13日に県東部(野波町)の中学校で発熱(39℃前後),頭痛,鼻汁,せき,咽頭痛を主症状とするインフルエンザ様疾患の集団発生の初発事例がみられた。患者のうがい液を採取し,ウイルス分離を試みたところMDCK細胞でA(H1)型ウイルスが検出された。この時期に県東部の松江市内および隠岐郡(西郷町)のサーベイランス定点からもA(H1)型ウイルスが検出されている。しかし,県中部,西部では,まだインフルエンザウイルスが検出されていないことから,1991年12月のインフルエンザは県東部にのみ流行したものと推察される。
翌1992年1月,新学期の開始とともに,各地でインフルエンザの集団発生が相次いでみられている。その中で,1月20日県中部(平田市)の中学校で発生した集団発生事例からA(H3)型ウイルスが検出されている。
島根県の昨シーズン(1990/91年)のインフルエンザは3種類のインフルエンザウイルスが流行している。まずB型ウイルスの流行が県西部で1月下旬から始まり,県東部では約7週間遅れた3月中旬から始まり,6月上旬まで検出された。また,A(H3)型は2月下旬から5月下旬まで,そしてA(H1)型は3月中旬から4月上旬に7株が検出されている。しかし,この間県西部では,A(H3)型,A(H1)型ウイルスは検出されていない。
今シーズンは,集団発生事例およびサーベイランス定点病院からの検体から検出されたウイルス型をみると,A(H1)型は県東部で昨年末から始まり,翌1月中旬から県西部へと流行している。一方,A(H3)型は,昨シーズンに流行のみられなかった西部で,本年1月中旬から始まったが,その後A(H1)型に置き換わって流行している。また,本年1月下旬から大分県,鳥取県ではB型ウイルスが検出されている。このことから,昨シーズン同様に2種類以上のインフルエンザによる混合流行が予測されるので,今後監視体制を強化し,流行の推移を見守っていく必要がある。
島根県衛生公害研究所 持田 恭,糸川 浩司,飯塚 節子,板垣 朝夫,五明田 斈
熊本県:A(H3N2)型およびA(H1N1)型が分離された集団発生
熊本県では,1992年1月20日に玉名郡の1小学校で集団かぜが発生した。これがこの冬の集団発生の初発であったが,A香港およびAソ連両型のインフルエンザウイルスが,同一集団から同時に分離されたので報告する。
全校の在籍者179名中,欠席21名,罹患登校56名で,閉鎖には至らなかった。検体の得られた5名の患者は,38.0〜42.0℃の発熱と咳,頭痛,咽頭発赤,咽頭痛などの臨床症状を呈していた。1名のみ嘔吐がみられた。患者の咽頭ぬぐい液からMDCK細胞を用いてウイルス分離を行ったところ,初代培養で4名からインフルエンザウイルスが分離された。同定の結果,A香港(H3N2)型3株,Aソ連(H1N1)型1株であった。急性および回復期の血清についてHI抗体を検査した結果(表),A香港型が分離された3名は,A/滋賀/2/91に対する抗体価が高く,1名が有意の抗体上昇を示した。また,Aソ連型が分離された患者もA/山形に有意の抗体上昇を示し,血清学的にも証明された。
本県におけるインフルエンザ様疾患集団発生状況は,2月14日までの累計(県保健予防課調べ)で,幼稚園1校,小学校11校,中学校2校(在籍者数705名,患者数458名,欠席者数236名)である。初発は県北西部であったが,中部,南西部(天草)にも波及した。県北東部および南部についても今後の推移をみていきたい。
熊本県衛生公害研究所 中島 龍一,村川 弘,甲木 和子,田中 明
熊本県玉名保健所 上村 亨輔,山本 勝幸
分離株の抗原性状(仙台市)
図(熊本県)
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