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S. Enteritidis(以下S.E)による食中毒事例が,1989年夏期を境に各地から報告され全国的に流行しているが,群馬県においても本菌による流行がみられたので,その概要を報告する。
本県では,サルモネラによる食中毒は例年1〜2件で,その血清型は様々であった。しかし,1989年はS.Eによる食中毒が2件,1990年には5件と多発し,1991年も3件の発生がみられた。3年間に発生したS.Eによる食中毒事例を表に示したが,10件のうち3件は100人を越す大規模な食中毒となった。発生期間はいずれの年も8〜10月で,原因施設は,旅館−飲食店がそれぞれ4件,学校給食施設と家庭が1件ずつであった。原因食品が特定されたのは4事例で,事例bPはババロア(菌数6.0×104/g),bRは牛肉のタタキ,bSは錦糸卵,ゆでキャベツ,千切りハムが混った冷し中華の具(菌数2.0×102/g),bWはお好み焼の具の冷凍魚介類(タコ,イカ,エビ)からS.Eが検出された。他の6事例は,食品の残がなく検索できなかったが,疫学調査から推定され,bTとbXの昼食には,それぞれ卵焼が,bVの洋食コースにはフルーツの卵白あえが含まれており,原因食品には卵が関与していると思われる食品が多くみられた。
上記食中毒10事例の関連性を調べる目的で,分離株のファージ型別(国立予研に依頼),薬剤感受性試験,プラスミドプロファイルを実施した。その結果,1989年に発生した食中毒は2事例ともファージ型34であったが,薬剤感受性(bPはSM耐性,bQはSM−TC−SA3剤耐性)と保有プラスミド(bPは約32,36Md,bQは約32,36,65Md)は異なっていた。一方,1990年と1991年に発生した8事例の食中毒はいずれもファージ型4で,薬剤感受性(使用したABPC,SM,TC,KM,CP,GM,CEZ,SA,NA,FOMに感受性),プラスミドプロファイル(約36Md単独保有)とも同一性状を示しており,共通する汚染源による可能性が示唆された。
また,食中毒防止対策の一環として実施している食品従事者からのサルモネラ検索においても,1989年には検出されなかったS.Eが,1990年は食中毒が発生した8月以降急増し18.5%(15/81)と首位を占め,1991年は8.0%(7/87)と減少傾向が見られた。これら分離株についてもファージ型,薬剤感受性,プラスミドプロファイルを調べたところ,両年分離株のほとんどが薬剤感受性,プラスミドプロファイルとも食中毒由来株と同一性状を示すファージ型4で,1989年に発生がみられたファージ型34はそれぞれ1株ずつであった。
以上の結果から,本県では1989年はファージ型34による食中毒が2件発生しているが,翌1990年には前年とは異なるファージ型4による汚染が急速に拡大し,その結果食中毒が多発,引き続き規模は縮小しているものの1991年もファージ型4が流行しており,今後も本菌の動向を注意深く見守る必要があると思われる。
群馬県衛生公害研究所 樋口 淑美,松井 初江,斎藤 朝子,重原 進
S. Enteritidisによる食中毒事例
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