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Vol.13 (1992/4[146])

<国内情報>
S. Enteritidisの検出状況について−川崎市


 1989年以来,全国的に多発しているS. Enteritidis(以下.E)による食中毒が本市でも1989年と1990年に2件発生しており,それらを中心に本市で分離した.Eとあわせて,薬剤感受性,プラスミドプロファイル,およびファージ型の面から検討した。

 供試菌株は1989年と1990年の2回の食中毒由来株と1984年から1991年までの散発下痢症患者,海外渡航者,食品および河川水から分離した61株を用いた。薬剤感受性試験は,TC,CP,SM,SA,KM,APBC,NA,GM,CERの9薬剤につき寒天平板希釈法によるMIC法で行った。プラスミドプロファイルはKadoらの変法に準じて抽出し,0.75%アガロースゲルで電気泳動後,エチジウムプロマイド染色により調べた。ファージ型別は国立予防衛生研究所ファージ型別室に依頼した。

 食中毒事例の概要は表1に示したとおりであり,保育園と小学校で発生しており,いずれもインフルエンザの流行時でもあり,診断は容易ではなかったようである。事例1はW保育園で1989年12月に発生したものであり,食品からは菌分離ができなかったが,喫食調査の結果から12月13日の園での給食(オムレツのミートソースかけ,甘酢和え,味噌汁,ごはん,りんご)あるいはおやつ(牛乳,あられ,ババロア)が考えられたが,原因追及には至っていない。128名の園児,職員のうち91名(71.1%)から.Eが分離され,分離菌はファージ型4,SM単独耐性,60Kbのプラスミドを保有していた。1歳から6歳までの低年齢であったため除菌に時間がかかり,全員陰性となったのは6ヵ月後であった。事例2は1990年11月N小学校の給食に出されたカスタードクリームにより発生したものであり,740名中219名(29.6%)とカスタードクリームから.Eを分離した。分離菌株はいずれもファージ型4,SM,SA耐性,90〜100,60,54Kbのプラスミドを保有しており事例1の由来株とは異なっていた。いずれの食中毒もファージ型4であり,英国で問題となっていた汚染鶏卵との関係も示唆されたが,その後の追及はできなかった。

 次に,本市で分離した61株の.Eについて検討した。薬剤感受性試験は25株がSM,NA,SM+SA,SM+SA+TCのいずれかのパターンに耐性であったが,.Eの流行する1989年以前には耐性株はみられなかった。プラスミドパターンは90Kb≦,60Kb,90Kb≦+60Kbの3つとその他,あるいはプラスミドを保有していないものとに分けられた。ファージ型は4タイプに分類され,8型は調査した1984年から1991年を通して検出され,4型は1989年の食中毒事例1以降1991年まで検出,34型は1989年,1990年の2年間のみ検出された。耐性パターンとプラスミドプロファイル,ファージ型の面からみて事例1の食中毒と同パターンの株が1991年8月に下痢症から,事例2の食中毒と同パターンの株が1990年11月に河川水からそれぞれ1株づつ検出されていたが因果関係は明らかではない。



川崎市衛生研究所 岡田 京子


表1.本市発生食中毒事例
表2.薬剤感受性パターンとプラスミド・パターン





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