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Vol.13 (1992/4[146])

<国内情報>
アストロウイルスを検出した急性胃腸炎の集団発生について−大阪府


 1991年6月24日(月曜)に府下東部の交野市で多数の小・中学校の生徒間に急性胃腸炎が発生しているとの届け出があった。ただちに管内の保健所によって市全域の小学校10校と中学校4校に対して患者の発生状況と欠席調査を重点項目に疫学調査が実施された。

 最終集計によると患者総数は生徒と教員を合わせて4,796名,患者の発生率は在籍者比で60.8%であった。患者発生は6月21日から25日までの5日間にわたってみられた。また,胃腸炎症状を主訴とする欠席者は同月21日から増加し,24日(月曜)をピークにして7月初めまで続いた。

 患者の急性胃腸炎症状(4,796名を対象)の特徴は下痢と腹痛の合併症が63.9%で最も多く,腹痛のみが25.9%,下痢のみが8.5%であった。腹痛は臍周辺部が最も多く,また,胃腸炎に伴う発熱が13.1%の患者にみられた。

 集団発生後,小中学校での二次発生はなく,また,同じ期間に同市内および隣接する市外地域の幼稚園や保育所,住民間における胃腸炎の流行は認められなかった。

 ウイルス検査の患者材料として急性期の便と咽頭うがい液が採取され,主に電顕検査とウイルス分離を行った。表は便材料の電顕観察を行った成績であるが,51例中5例から小球形のウイルス粒子が検出された。ウイルス陽性者は,小学校のケースが4例,中学校が1例(生徒)であった。小学校の陽性者4例は同じ学校の教員2名と学童2名である。これらの小中学校に共通する給食センターのスタッフは全員が陰性であった。

 検出した粒子の直径は約30nmで,表面に5〜6個の星状模様が観察され,形態的にアストロウイルスに類似した。ウイルス粒子は後に,当課と予研ウイルス中央検査部,および米国CDCウイルス性胃腸炎研究ユニット(グラス博士)による調査の結果,PCRとEIAの両検査法によってアストロウイルスであることが確定した。

 ウイルス分離成績は,エコーウイルス30型が便材料から1例検出された以外は,うがい液を含めて陰性であった。また,患者の便材料から食中毒菌は検出されなかった。

 胃腸炎患者の血清診断は免疫電顕法で行った。これには2週間隔で採取された患者のペア血清を被験血清として用い,本流行から検出したアストロウイルスに対する血中抗体を測定した。試験に供した13例のペア血清中3例に有意なウイルス抗体の上昇が確認されたが,この3例はいずれもアストロウイルス陽性者であった。

 その他,流行期間中の飲料水およびプール使用水の水質検査も同時に実施されたが,異常は認められなかった。また,感染源と考えられた給食の喫食調査も行われたが,献立の中に汚染源と推定できる食品は含まれなかった。

 上に述べたように,市全域の小中学校に及ぶ大規模な胃腸炎から共通の病原体を検出するまでには至らなかった。しかし,流行時にアストロウイルスが年齢の偏りもなく複数の患者から検出された表の成績とウイルス陽性者に特異抗体の上昇が確認された免疫電顕の結果とを併せて判断すると,今回の胃腸炎の集団発生にアストロウイルスが病原の一つとして関わっていたことが推測される。この因果関係について現在さらに検討を加えている。

 所轄保健所,府環境保健部の担当者の皆様に感謝いたします。



大阪府公衆衛生研究所ウイルス課
大石 功,山崎 謙治,峯川 好一


電顕による胃腸炎患者便材料からのアストロウイルスの検出





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