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1989年までのアデノウイルス検出状況については
本月報第11巻第3号に記載された。
今回はその後の報告を加えた1990年および1991年の検出状況の報告である。
1990年および1991年にヒトから検出されたアデノウイルスはそれぞれ1,604および1,809(1992年7月末現在数)で,このうち82%が地方衛生研究所からの報告,また,59%がサーベイランス定点で採取された検体からの分離報告である。
アデノウイルスの中で年によって報告数が大きく変動するのは3型および4型である(図1)。1990,91年はともに3型および4型の検出報告数が多かった。3型は1985年を除き毎年最も報告が多い。1990,91年は過去最も多かった87年に比べると約3分の2である。4型は84年をピークとしてその後減少したが,再び増加傾向がみられる。8型と37型が91年にやや増加した。3型と4型の検出数は例年夏季に増加するが,他の型では明確なピークがみられない。
アデノが検出された検体の種類(表1)は合計でみると鼻咽喉材料が最も多く,ついで眼ぬぐい液,便である。しかし,型によって分離材料に差がみられる。1,2,5,6型は鼻咽喉と便,3型の77%は鼻咽喉,20%は眼ぬぐい液から分離された。4型は眼ぬぐい液からの分離が66%,鼻咽喉が33%であった。8,19,37型は主に眼ぬぐい液,11型は主に尿,40,41型は便からの検出報告である。14型1株と31型2株は便から分離された。
1〜37型の3,141例はすべて細胞培養で分離された。40型2,41型6の検出例は型特異単クローン抗体を用いた酵素抗体法,41型11例は細胞培養であった。型未同定253の検出方法は細胞培養186,電顕52,ラテックス凝集反応17,酵素抗体法3であった。
アデノ検出例の年齢(表2)をみると,1,2,5,6型は0〜4歳が75%以上を占め,20歳以上の分離報告は3%以下である。3型は9歳以下が多いが,20歳以上が11%みられた。4型は20歳以上が55%,11型は52%,8,19,37型は69%以上を占めた。
アデノ3型および4型の分離例についてそれぞれ年齢と臨床症状を集計した(表3および表4)。アデノ3型では上気道炎が58%,角膜炎/結膜炎が35%報告された。上気道炎は9歳以下が中心であるのに対し,角膜炎/結膜炎は幅広い年齢から報告され,9歳以下と20〜30歳代に2峰性のピークがみられる。一方,4型では上気道炎は27%に対し,角膜炎/結膜炎は68%に増加し,成人例の角膜炎/結膜炎が多い。
1990年以降,感染症サーベイランスにおける咽頭結膜熱および流行性角結膜炎の患者発生状況は,いずれもアデノ3および4型の分離報告の増加と平行して増加した(表5)。今季,1992年32週現在の一定点当たり患者報告数はいずれも昨年の約2分の1(咽頭結膜熱:内−小児科0.29,眼科0.15,流行性角結膜炎1.55)である。地域別にみると東海−北陸地方で増加がみられている。
図1.月別アデノウイルス検出状況 1982〜1991年
表1.検体の種類別アデノウイルス検出状況(1990年1月〜1991年12月)
表2.アデノウイルス検出例の年齢分布(1990年1月〜1991年12月)
表3.アデノ3型検出例の年齢と臨床症状(1990年1月〜1991年12月)
表4.アデノ4型検出例の年齢と臨床症状(1990年1月〜1991年12月)
表5.年別咽頭結膜熱と流行性角結膜炎患者発生状況1987〜1991年(感染症サーベイランス情報)
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