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平成3年度の大分県におけるインフルエンザの流行はAソ連型,A香港型とB型による混合流行で,1月中旬に始まり3月下旬にほぼ終息した。
大分県感染症サーベイランス情報によれば,大分県の報告患者総数は7,522名で昨年(5,160名)の約1.4倍であった(図1)。一方,集団発生事例における報告患者総数も2,530名で昨年(1,819名)の約1.4倍であった。この流行期間中に,感染症サーベイランスの患者135名からAソ連型48株,A香港型14株とB型6株の合計68株が分離された(図1)。その状況は,第3週にAソ連型が分離されたのに続いて第6週にはB型が分離され,ちょうどこの時期に報告患者数もピークに達した。さらに第8週(3月初め)にはA香港型が分離され,第12週には3タイプのウイルスが同時に分離された(図1)。集団発生事例では46名についてウイルス分離と血清学的検索を実施したが,Aソ連型が11株,A香港型が2株,B型が4株の合計17株が分離された(表1)。集団発生事例(在籍者38名,欠席者15名,罹患登校者11名)からB型が4株検出されたが,このB型ウイルスに対する予研ウイルスリケッチア部ウイルス第3室での標準抗血清による抗原分析結果は表2に示したとおりである。
血清学的には46名のペア血清において21名がAソ連型に,6名がA香港型に,5名がB型に対し有意の抗体上昇を示した(表1)。また,B型ウイルスが検出された患者の臨床症状は38.0〜39.3℃の発熱と腹痛,嘔吐,食欲不振を訴える者が多かった。一方,Aソ連型および香港型が分離された患者の症状は上気道炎を呈する者が多かった。
ウイルス学的および血清学的検索の結果,大分県における平成3年度のインフルエンザの流行はAソ連型,A香港型およびB型の3種血清型による混合流行であったが,流行規模は小規模であった。なお,3種血清型による混合流行は大分県においては初めての経験であった。
大分県衛生環境研究センター 小野 哲郎,小河 正雄
図1.インフルエンザ様疾患の発生状況(大分県)
表1.保健所別インフルエンザ集団発生状況と流行ウイルス型
表2.Antigenic characteristics of B viruses isolated in Oita prefecture in 1991-1992 season.
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