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Vol.13 (1992/10[152])

<国内情報>
平成3年度厚生科学研究費補助金(特別研究事業)「衛生研究所および保健所における行政検査の質の向上に関する研究」−寄生虫系調査結果


 平成3年度厚生科学研究費補助金(特別研究事業)「衛生研究所および保健所における行政検査の質の向上に関する研究」の一環として,全国の地研のご協力をいただき,衛生研究所で実施されている行政検査並びに一般検査の実態を把握するためのアンケート調査を行った。微生物系のうち,細菌系では病原微生物検出情報月報5月号(Vol. 13,bT)で述べたとおりの結果が得られた。寄生虫検査については以下のような結果であった。

 まず,寄生虫検査の実施状況を見てみると,全国71地研のうち57地研(内3地研の内容は不明;都道府県37,指定市8,政令市12)が検査を実施していた。一方,14地研は検査を実施していなかった。このうち3地研では寄生虫検査は保健所で蠕虫類についてのみ実施しており,保健所と民間,または民間に検査を委託しているのがそれぞれ1地研であった。9地研では検査はまったく行わず委託もしていなかった。

 検査を実施している54地研からは47種の寄生虫種のそれぞれの検査内容についての回答が得られた。内訳は吸虫類9種,条虫類12種,線虫類17種および原虫類9種であった。このうちもっとも多くの地研で検査を行っていたのは35地研の赤痢アメーバであり,ついで回虫の31地研,蟯虫とアニサキス・テラノバの29地研の順であった。その他の寄生虫については20以下であった。日本住血吸虫やエキノコッカス,バンクロフト糸状虫のように分布が限定している場合は検査を実施する地研は限られるが,ほぼ全国で日常遭遇する可能性のある寄生虫でも検査を実施している地研が全地研の半分以下であった。

 検査の内容では,虫体の形態学的検査から集卵法を用いた虫卵検査や免疫学的検査までを実施する地研から,形態学的検査か虫卵検査または免疫学的検査のいずれかのみ実施している地研まで,検査レベル並びに検査対象寄生虫種数は地研間でかなり異なっていた。

 現状の人員の中での検査技術の修得および検査体制の確立と検査技術の継承,技術講習会の実施,問題や事件発生時に対応し各種情報を提供するためのレファレンスシステムの設置,検査情報を交換するためのネットワークの整備並びに精度管理法の導入など,解決すべき課題が多く残されている。



主任研究者 松崎 稔(神奈川県衛生研究所長)


寄生虫系調査結果





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