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Vol.13 (1992/12[154])

<外国情報>
肺ペスト−米国


 1992年8月,アリゾナ州で31歳の男性が肺ペストで死亡した。本事例は1992年に米国で発生した10例目のペスト患者であるが,肺ペストとしては初発であり,死亡例としては1987年以来である。患者は腹痛で発症し,その後40℃の発熱と嘔気,嘔吐,下痢,咳の症状で受診した(3病日)。胃腸炎の診断のもとにシプロフロキサシンの内服とリンコマイシンの筋注を受けたが,翌日(4病日)チアノーゼと肺血症性ショックのため入院した。胸部X線で肺炎,喀痰染色で多数のグラム陰性桿菌が認められ,ただちにセフタジシム,エリスロマイシン,ペニシリン,トブラマイシンが投与されたが翌日(5病日)死亡した。喀痰材料から分離された菌がYersinia pestisであることが判明したのは患者の死後1週目であった。

 分離菌の迅速診断法ではY. pestisのプログラムが欠けていたため当初はY. pseudotuberculosisと同定され,その後生化学性状の検査でY. pestisと同定された。菌が検出されたのは初診時の喀痰のみであり,生前患者の血液,尿および死後の血液,髄液,肺組織の培養では陰性であった。

 患者は発症3日前にコロラド州Chaffee区でペストに罹患したネコ(顎下腺膿瘍があった)と接触し経気道感染したと考えられる。患者の死後同地区は徹底的なノミの駆除が実施され,看護婦等患者と接触した人に対してはテトラサイクリンの予防内服が実施された。

(CDC,MMWR,41,40,737,1992)






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