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1992年6月下旬から約1カ月間,日本海沿岸の浜坂町と温泉町で,発熱,頭痛,嘔吐,頸部硬直を主症状とする無菌性髄膜炎が多発した。発疹を伴う者はみられなかった。当施設に検体の送られてきた患者18名の年齢は4〜8歳が主で,3歳から10歳までの幅があった。便15,髄液5,咽頭拭い液5,計25検体をRD−18S細胞(R)とVero細胞(V)を用いてウイルス分離を試みた。その結果16名からウイルスが検出された。細胞別ウイルス分離割合(R/V)は,便(14/8),髄液(4/1),咽頭拭い液(4/3)であった。すべてエコーウイルス(E)6型であった。
当施設では分離ウイルスの同定にあたって,予研分与エコーウイルス・プール血清と市販の単血清を用いているが,今回分離されたE6は予研プール血清では中和され難かった。市販の単血清の中には非特異的に他のウイルス型を中和するものもあり,当初我々はコクサッキーウイルス(C)B2型と見誤った。
約2カ月後の患者回復期血清14検体(全員からウイルス分離)が得られたので,大阪府公衛研・山崎氏からCB2,E6標準株と中和血清を分与頂き中和試験を行った。結果はCB2に対する高い中和抗体を保有するものは1名のみで,E6に対する高い抗体価(1:128以上)を持つものが9名であった。
再度,予研プール血清および大阪府公衛研分与E6中和血清(最近の分離株を用いた自家製)で同定を行ったところ,今回の分離株すべてが予研プール血清では中和されず,公衛研分与のE6中和血清で中和された。
このことから,今回分離されたE6は少し変異している可能性が考えられるので,今後E6の同定は慎重に行う必要があると思われる。
尼崎市立衛生研究所 小川 権一
公立浜坂病院小児科 芦田 乃介
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