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Vol.14 (1993/12[166])

<国内情報>
ポリオウイルス2型の分離例について−大分県


 わが国の麻痺型ポリオの患者数は,経口生ワクチン投与開始以降激減し,1981年から現在まで,野生株による定型ポリオ患者の国内発生はないようである。しかし,最近では,生ワクチン株に起因すると思われる,いわゆる「ワクチンポリオ」の発生が散見されるようになった。

 今回,本県においてポリオと診断された患者が発生し,その患者の髄液および糞便からワクチン株と思われるポリオウイルス2型を分離したので,その概要を報告する。

 患者は,日出町内在住の男児(発病時10カ月)で,基礎疾患はなく,ポリオワクチンの接種歴や海外渡航歴もない。なお,患者の居住地区では,本年4月27日と28日にポリオワクチンの一斉投与が行われている。家族構成は,本人,両親,祖母の4人家族であり,患者は1993年の3月から6月頃まで託児所に通っていた。そこでの児数は本人を含めて9名で,その中の2名がワクチン接種を受けていた。本人は7月初めから上気道炎等の軽い風邪様症状を呈していたため自宅療養をしていたが,1993年8月9日に39℃の発熱,上気道炎,下気道炎,麻痺を訴えたため,別府市内の医療機関を受診し,当初ギランバレー症候群を疑われた。

 ウイルス分離は大分医大および当研究センターで実施した。当研究センターではHeLa,BGM,Vero,RD−18Sの培養細胞を用いた。1〜2日目にすべての細胞にCPEがみられ,BGM細胞に特に強いCPEがみられた。そのため,BGM細胞を用いて以後のウイルスの同定およびマーカー試験を行った。また,血清中和抗体価の測定は,流行予測用ポリオ生ワクチンウイルス株を用いて,マイクロタイター法により行った。ウイルス分離および血清抗体検査状況は表1のとおりであった。

 当研究センターで行ったマーカー試験では,8月10日の髄液からの分離ウイルスおよび9月10日の糞便からの分離ウイルスはどちらも,rct/40-であった。現在,その性状についての詳細を予研ウイルス第二部で検討中である。

 今回の事例は単発事例である。患者はポリオワクチンの接種歴がなく,患者居住地区のポリオワクチン一斉投与月日(4月27,28日)から,発病月日(8月9日)まで3カ月以上経ている。ただし,患者は,発病の約2カ月前までは託児所での集団生活の中にあり,他のポリオワクチン接種児との接触感染の可能性が考えられる。しかし,患者の発病までの期間,ウイルスがどのような形でどこで保存維持されていたか等考慮すべき点が多いが,現在それらすべては不明である。



大分県衛生環境研究センター 中田 高史,小野 哲郎,大友 信也
大分医科大学微生物学教室 三舟求 真人


表1.ウイルス分離及び血清抗体検査状況





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