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Vol.14 (1993/12[166])

<国内情報>
ワクチン株により発症した定型ポリオ患者(contact case)例−北海道


 ポリオワクチン接種を受けた同胞からポリオウイルスに感染し,麻痺を起こしたと思われる症例が北海道由仁町においてみられた。以下にその概要を述べる。

 患者は1歳5カ月の男児で,1993(平成5)年6月14日に発熱が認められた後,同月16日に左足弛緩性麻痺による起立・歩行障害が出現,ポリオ様麻痺と診断された。由仁町では同年5月18日にポリオワクチンの集団接種が行われ,患児の同胞(6カ月,女児)がワクチン投与を受けたが,患児は風邪症状のため投与を受けていない。また,患児にポリオワクチン接種歴もない。6月28日に患児から糞便検体を採取し,ウイルス分離を試みたところ,Vero,BGM細胞でポリオウイルス2型が分離された。ワクチン由来か否かの識別試験が血清学的方法およびPCR−制限酵素法によって行われた結果,この分離株はSabin2型由来であることが判明した。3’末端側の3D領域はSabin1型のリコンビナントであった。おそらく,同胞の受けたポリオワクチンウイルスが増殖の過程で変異を起こして毒力復帰し,患児に麻痺を起こしたものと思われる。

 患児は左下肢麻痺が完全には消失せず,現在でも装具をつけた状態での運動機能訓練が継続されている。なお,同胞には副反応は全く出ていない。本症例は生ポリオワクチンの持つ問題点が現実となった例であり,集団接種の重要性をあらためて示すものであろう。



北海道立衛生研究所 沢田 春美
北海道立小児総合保健センター 仁平 洋,皆川 公夫,梅津 征夫,本谷 尚
わたや小児科 綿谷 靖彦
予研ウイルス第二部 米山 徹夫,藤原 卓,萩原 昭夫





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