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Vol.15 (1994/3[169])

<国内情報>
山形県における今冬季のインフルエンザの流行状況


 私達は,毎年インフルエンザ流行前に県内住民のインフルエンザウイルスに対する抗体保有状況を調べ,山形県におけるインフルエンザの次期流行を予測する資料を提供している。本年度は,平成5年7月に無作為に選んだ山形県住民319名(0〜89歳)から血清を採取し,本年度のインフルエンザワクチン株3株に対するHI抗体価を測定して,免疫の程度を調べた。この調査結果および国内外の情報から,私達は,今冬季のインフルエンザの流行株はA香港型およびB型が有力候補で,昨年と同様に混合流行の可能性もあると予想した。

 このような状況のなか,平成6年1月中旬以降に山形市立第四中学校と酒田市立十坂小学校,南陽市立漆山小学校,寒河江市立綾南中学校および小国町立沖庭小学校で相次いでインフルエンザ様疾患の集団発生の情報が入った。私達はこれらの小中学校から検体を採取してウイルス分離を実施し,5つの小中学校すべてからA香港型インフルエンザウイルスを分離した。このウイルスの抗原性は昨冬のウイルスに類似していた(表1)。患者の抗体応答を表2,3に示す。

 また,同時期の山形市内の感染症サーベイランス検査定点医由来の検体からもA香港型インフルエンザウイルスが分離された。山形県のインフルエンザ様の集団発生患者は環境保健部保健予防課の調べによれば2月17日現在,23の小中学校で報告があり,患者総数は3,784名に達している。その後,山形県におけるA香港型インフルエンザの流行は,急激に拡大することなく,県下全域でくすぶりつづけている。

 しかし,当初予想したB型インフルエンザウイルスは,2月22日現在まだ山形県内に姿をみせていない。今後山形県内でのB型インフルエンザの流行の可能性はまだ棄てきれない。



山形県衛生研究所 大山 忍,我孫子 千恵子


表1.山形県で集団発生から分離されたウイルスの抗原性(1994年1月,A香港型)
表2.ウイルス検査成績(山形市立第四中学校)
表3.ウイルス検査成績(南陽市立漆山小学校)





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