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無菌性髄膜炎は主としてエンテロウイルスによって起こる。日本では毎年夏を中心に流行し,年によって起因ウイルスの型は異なる(図1)。予後は一般に良好で後遺症を残さない。
感染症サーベイランス情報による1993年の一定点当たり無菌性髄膜炎患者年間報告数は3.89となり,1987年(4.01)以来最低のレベルであった。1993年は7月にピークとなった後,いったん減少したが10月にやや増加した。
1993年の無菌性髄膜炎患者の年齢は0〜4歳42%,5〜9歳43%,10歳以上16%であった。1991年にはエコーウイルス30型(E30)による大規模な流行があり5歳以上の割合が増加したが,1993年の同割合は例年並みで,0歳の割合は1991年に比べ高かった(図2)。
病原微生物検出情報へのウイルス検出報告では1993年の髄膜炎の主たる起因ウイルスはエコーウイルス11型(E11)であった。その総検出数は350,うち126(36%)は髄膜炎患者から分離された。髄膜炎患者からのE11検出数は1989年に91と多かったが,1993年はこれを上回った(表1)。1992年に髄膜炎患者からの検出数が多かったE9,E6,E24,コクサッキーウイルスB4(CB4),CB1,E5
(本月報Vol. 14,bS参照)
は,いずれも1993年に減少した。
1993年のE11検出は西日本を中心に23機関から報告された。滋賀,大分では6〜7月,岐阜では7月,鳥取では8〜9月,熊本では10月に検出数が多かった(表2)。
E11検出例の年齢をみると,0歳(60例)と4歳(50例)をピークとする2峰性に分布していた。そのうち髄膜炎が報告された例は4〜6歳(各21,20,21例)が中心で,年長児ほど髄膜炎の報告される割合が高い(図3)。
髄膜炎患者からのE11分離数(126)は髄液からが最も多く91(72%),次いで鼻咽喉材料50(40%),便31(25%)の順であった(同一人の複数検体から分離された例を含む)。
1993年の髄膜炎患者からはE11の他に,E30,E9,E7,E6,CB2,エンテロウイルス71型などが分離されている(図4)。これらのウイルスは,それぞれ限られた地域で分離され(表3),いくつかの局地的流行が報告されている
(本月報Vol. 14,bW,
10,
11参照)。
このうちE7は,1986年に大きな流行があったが,1987〜1992年の検出は少なかった型で(表1),今後の動向が注目される。
図1.無菌性髄膜炎患者報告数の推移,1982〜1993年(感染症サーベイランス情報)
図2.無菌性髄膜炎患者の年齢分布(感染症サーベイランス情報)
表1.髄膜炎患者からの年別エンテロウイルス検出数,1982〜1993年
表2.月別報告機関別エコー11検出数,1993年
図3.エコー11検出例の年齢分布,1993年
図4.髄膜炎患者からのウイルス検出状況,1993年
表3.報告機関別髄膜炎患者からのウイルス検出数,1993年
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