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Vol.14 (1993/4[158])

<特集>
無菌性髄膜炎 1992


 日本では毎年夏を中心に無菌性髄膜炎の流行がみられる(図1)。1991年は大流行であったのに対し(本月報Vol.13,No.8,1992参照),1992年は患者発生が少なく,髄膜炎患者からのウイルス分離報告数は前年のほぼ4分の1であった。1989〜91年に3年連続して首位であったエコーウイルス30型(E30)が1992年に大きく減少し,髄膜炎患者からは1〜3月に24,6月に1例のみ,その他の疾患からも7月以降全く検出されていない(表1)。代わってエコー9型(E9)とエコー6型(E6)の報告が増加し,この2つの型の合計が髄膜炎患者からの分離数全体の約半数を占め,これに次いでエコー24型(E24)とコクサッキーB4型(CB4)が報告された(図2)。

 感染症サーベイランス情報における1992年の一定点当たり無菌性髄膜炎患者年間報告数は4.29となり,1991年13.91から大きく減少した。これは1987年,1988年と並んで低いレベルである。患者発生のピークは例年7月であるが,1992年は7月と8月がほぼ同レベルであった(一定点当たり月当たり患者報告数0.84と0.83)(図1)。

 1992年の患者の年齢は0〜4歳42%,5〜9歳43%,10歳以上14%であった。1991年はE30の流行が大きかったので,この感染年齢を反映して5歳以上の割合の増加がめだったが,1992年は例年並みに戻った(図3)。

 病原微生物検出情報において,E9は1983〜84年の小流行後5年間は少数の報告しかなかったが,1990年に急増し,1991年まで2年連続してE30とともに流行がみられた(表1)。1992年にE30の流行がおさまった後も引き続き流行し,検出例の大部分に髄膜炎が報告された(図2)。7〜8月をピークとして10地研において髄膜炎例からE9が分離された(表2)。1992年にE9検出報告が多かったところは1990〜91年に報告が少なかった地域である。

 E6は1985年の流行後少数報告されていたが,1992年に急増した(表1)。1992年は検出報告の約半数に髄膜炎が報告された(図2)。7〜8月をピークとして24地研において髄膜炎例からE6が分離されている(表3)。うち9地研はE6とE9の両者を報告した。

 ウイルス検出例の年齢分布をみると,E6検出例では,0歳と5歳に2峰性のピークがあり,そのうちで髄膜炎が報告された例は5歳が中心であった。E9検出例では,検出例,髄膜炎例ともに4歳がピークであった。1〜4歳の髄膜炎例ではE6検出例よりもE9検出例の数が上回っている(図4)。

 髄膜炎患者からのウイルスは髄液からの分離報告が他の材料よりも多く(E9:70.6%,E6:74.3%),しばしば便または鼻咽喉材料から同時に検出される(E9:43例,E6:40例)。

 1992年にE6,E9に次いで髄膜炎からの検出報告が多かったE24は1983年の小流行以来9年ぶりの増加である(表1)。87例中85例は感染症サーベイランスで患者発生が多かった香川で5〜8月に検出された(本月報Vol.13,No.12,1992参照)。CB4は1982年以来毎年検出されているが,1992年の検出数はこれまでの最高である(表1)。87例中71例が岐阜で検出された。



図1.月別無菌性髄膜炎患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
表1.髄膜炎患者からの年別コクサッキーB4,エコー6,9,24,30型検出状況 1982〜1992年
図2.髄膜炎患者からのウイルス検出状況,1992年
図3.無菌性髄膜炎患者の年齢分布(感染症サーベイランス情報)
表2.髄膜炎患者からの月別報告機関別エコー9検出状況
表3.髄膜炎患者からの月別報告機関別エコー6検出状況
図4.E6,E9ウイルス検出例の年齢分布,1992年





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