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Vol.14 (1993/4[158])

<国内情報>
小児急性胃腸炎からの小型球形ウイルス(SRV)検索−北九州市


 感染症サーベイランス事業報告の感染性胃腸炎月別患者発生状況(図1)によれば,例年患者発生数のピークは冬季にあり,またそれ以外にも5〜7月に小さくあることがすでに知られている。われわれは,昨年度冬季に小児急性胃腸炎について電子顕微鏡によるウイルス学的病原検索を行い,冬季の小児胃腸炎にロタウイルスに次いでSRVが深く関与していることを確認した。そこで引き続き年間における小児胃腸炎発生とSRVの関連を調査するため,小児便を検体としたウイルス検索を行った。

 材料は,1992年4月〜1993年2月までに市内のサーベイランス定点2ヵ所から送付された糞便402検体である。検体をダイフロン処理後,超遠心し,その沈渣をネガティブ染色して電顕(JEM1200EX−U,日本電子)にて観察した。

 その結果,68検体(16.9%)からSRVが検出され,その内訳はNorwalkvirus様粒子(SRSV)50(12.4%),カリシウイルス10(2.5%),アストロウイルス8(2.0%)であった。SRVの月別検出状況を表1に,月別検出率を図2に示す。

 これによると,1992年は5〜7月にSRV性の小ピークがあり,8〜10月の閑散期をはさみ11〜12月に大きなピークがあったことが推測される。これは,図1の冬季の大きな山はもちろんのこと,5〜7月の小さな山とも一致している。

 またウイルス別にみると,SRSVが6〜7月と11〜12月に高率に検出され,カリシウイルスは6月と11,1,2月に,アストロウイルスは4〜5月と12〜2月に検出されている。このように例年5〜7月におこる感染性胃腸炎の小流行にSRVが関与していることが示唆された。なおアストロウイルスのEIAによる同定は,現在予研に依頼中である。



北九州市環境衛生研究所 仮屋園 弘志,中村 悦子,下原 悦子,杉嶋 伸禄
佐久間小児科医院 佐久間 孝久
橋爪小児科医院 橋爪 広好


図1.北九州市における感染性胃腸炎の年次別月別定点当たりの患者数の推移
表1.月別SRV検出状況
図2.月別SRV検出率



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