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Vol.14 (1993/10[164])

<国内情報>
今夏の奈良県におけるエンテロウイルスの分離状況


 我々はRD−18S,HEp−2,MA104細胞および乳のみマウスを用いてエンテロウイルスの分離を行っている。9月1日現在,55株のエンテロウイルスが分離され,その内訳はコクサッキー(C)A10が2株,CA6が21株,エコー(E)30が22株,CB5が1株,エンテロ71(EV71)が7株およびE11が2株であった。これらのウイルスの分離状況を月別にみると(表1),CA10は5月に分離された。CA6は4,6および7月に分離され,7月にピークがみられた。E30およびEV71は5月〜8月までの4カ月間分離され,ピークはそれぞれ7月と6月であった。CB5およびE11は7月に分離された。

 疾患別にみると(表2),無菌性髄膜炎からはE30が19株,EV71が6株分離された。そのうちEV71が分離された無菌性髄膜炎6例中5例は手足口病を伴っていた。平均年齢をみると,E30が分離された無菌性髄膜炎患者では6.0歳に対し,EV71では2.2歳と若年であった。また,E30にはRD−18S細胞が最も感受性がよく,髄液から11株分離された。EV71にはMA104細胞が最も感受性がよかったが,髄液からは分離されなかった。

 ヘルパンギーナからは20株分離されたが,すべてCA6であった。分離材料はすべて咽頭ぬぐい液で,乳のみマウスで最も多く分離された。RD−18S細胞からは3株分離された。

 感染性胃腸炎からはCA6が1株,CB5が1株,E11が1株およびE30が2株分離された。その他の疾患からはCA10が2株(ウイルス性発疹症,不明熱),EV71が1株(手足口病),E11が1株(急性扁桃炎)およびE30が1株(上気道炎)分離された。

 なお,EV71の同定は予研分与の抗血清では中和され難かった。E30は予研分与の抗血清で容易に中和された。以上が9月1日までの分離状況であるが,現在10株程度同定中である。



奈良県衛生研究所


表1.月別にみたエンテロウイルスの分離状況
表2.疾患別にみたエンテロウイルスの分離状況





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