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毎年,冬期になるとカキ等の魚介類の喫食に起因すると思われる胃腸炎が発生し,小型球形ウイルス(SRV)がしばしば検出されているが,今冬もカキに関連した胃腸炎が発生したのでその概要を報告する。
1月25日に埼玉県南部U市の中央保健所に食中毒疑いの事件として集団胃腸炎の発生が届け出られた。同保健所の調査により以下のことが明らかとなった。
1月22日午後7時,A社社員等25名が市内の寿司店Hにて会食を行った。1月24日,このうち4名が腹痛,下痢,感冒様症状のため市内の病院を受診したところ,急性胃腸炎と診断された。その後の調査により,発症者は27名中18名で,1月23日に5名(28%),24日11名(61%),25日2名(11%)が発症していることが明らかとなった。発症者の症状は,下痢13名(72%),嘔吐9名(50%),発熱9名(50%),腹痛14名(78%)であった。寿司店Hでの会食の献立は,鍋物(キンメ,カニ,野菜類),刺身(マグロ,カンパチ,甘エビ,子持ちワカメ,アジ,大根,大葉),寿司(トロ,カンパチ,マグロ,甘エビ,イクラ,イカ,玉子,巻物),カニ,アン肝,酢ガキであった。
細菌学的検査の結果,調理従事者の糞便,手指,および施設の水槽内から黄色ブドウ球菌が検出されたが,喫食者糞便からは検出されず,潜伏期間や症状からもブドウ球菌が原因とは考えにくかった。
発症者糞便10検体につき電顕でウイルスを検索したところ,4検体からSRVが検出された。調理従事者については検体量が少なく有効な検索を行えなかった。
摂食調査によると発症者18名中17名が酢ガキを食しており,残り1名は不明である。非発症者9名については,酢ガキを食べたもの1名,食べていないもの7名,不明1名であった。このことからカキに関連したSRVがこの集団胃腸炎の原因と推定された。
埼玉県衛生研究所 内田 和江,篠原 美千代,大塚 孝康,後藤 敦
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