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Vol.15 (1994/6[172])

<外国情報>
日本脳炎不活化ワクチン


日本脳炎(JE)はアジアでもっとも頻度の高いウイルス性脳炎で,中国,韓国,日本,東南アジア,インドおよびオセアニアで毎年約50,000例の散発性および流行性の症例が発生している。不活性化JEワクチンは感染マウス脳,あるいは初代ハムスター腎細胞で作製されている。1〜4週間隔で2回の接種で有効とされているが,3回接種(0,7,30日目)がより高い中和抗体を引き起こし,少なくとも2年は防御能のある中和抗体価を維持する。JEワクチンによる深刻な副反応は低いが(1万人対1〜104例),局所(疼痛,腫脹,発赤,平均20%)および中等度の全身性副反応がある(発熱,頭痛,筋肉痛等,平均10%)。最近,オーストラリア,ヨーロッパ,北米でワクチン接種した旅行者に新しいタイプの副反応が報告されている。これは接種後数分から2週間後までに発生する全身性のじんましん,四肢,顔面の血管性浮腫,低血圧等で呼吸性障害を引き起こすこともある。抗ヒスタミンおよびステロイドが有効であるが,免疫学的機序は分からない。接種者は,ワクチン接種後10日までは,この副反応に対処できる医療施設の付近にとどまるべきである。また,なんらかのアレルギー反応の既往のある人は,このリスクが高いため,脳炎発症のリクスと副反応のリスクを十分考慮すべきである。JEワクチンは,JEが流行する地域に存在する人々には勧められるが,アジアへの旅行者には,JE感染の危険度は極めて低いため,一般には勧められない。脳炎発症の危険性あるいは副反応のバランスを考慮して実施されるべきである。

(WHO,WER,69,16,113,1994)






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