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1994年1月,44歳のカリフォルニアの男性が脳炎症状で死亡した。1カ月後に剖検でネグリ体が見つかり,脳の凍結切片による蛍光抗体法で狂犬病が確認された。CDCでモノクローナル抗体およびウイルス核酸の塩基配列の解析が行われ,コウモリ(silver-haired bat, Lasionycteris noctivagans)に関連した株と確定された。家族によると,患者は特にコウモリとの接触はない。1993年春に数日病気の子猫を飼っていたが,咬まれたり,ひっかかれた記憶はない。1991年にユタ州の洞窟を訪れており,しばしば戸外でテントなしにキャンプをしていた(最近は1993年9月)。患者の死後,患者と接触した家族,ヘルスワーカーに狂犬病の予防接種が行われた。
1980年以降米国では19例の狂犬病症例が報告されている。これらのうち8例は米国外で家畜から感染した例である。狂犬病の生前の診断は特異的な症例がないことと,米国では頻度が低いことにより困難である。ウイルス感染の疑われる急速に進行する脳炎の鑑別診断として,動物による咬傷歴がなくとも狂犬病は常に考慮されるべきである。このカリフォルニアの症例は1980年以降,コウモリが関連した8例目の症例である。コウモリによる咬傷が明確であったケースはこのうち1例のみである。コウモリ関連株はコウモリの咬傷のみならず,コウモリから感染した他の動物からも感染しうる。コウモリの狂犬病は米国では地域的に流行している。1992年に46州から647例のウイルス陽性コウモリがみつかっている。コウモリによる咬傷は他の大きな動物に比べ深刻でないため気付かれにくい。コウモリと接触のあった時は常に予防接種を考慮すべきである。狂犬病対策上,コウモリは重要な位置を占める。
(CDC,MMWR,43,25,455,1994)
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