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Vol.16 (1995/1[179])

<特集>
サルモネラ 1992〜1994


 厚生省の食中毒統計年報によると,これまで年間発生数3万を超えていた食中毒患者は,1992年は25,195,1993年は19,089に減少した。1993年は冷夏の影響で食中毒事件数,患者数ともに近年では最低の発生数となったが,サルモネラによる患者は細菌性食中毒患者の36%(6,954名)を占め,事件数(143件)とともに1992年に続き第1位であった。

 病原微生物検出情報で取り扱う病原菌のうち,地研・保健所において最も多く検出されるのはサルモネラである。1992年は全報告数の38%,1993年は44%がサルモネラであった。1983〜1993年のサルモネラ検出数の推移をみると,多少の増減はあるもののサルモネラ検出総数に大きな変動はみられない。しかし血清型の推移では,S. Enteritidisの増加傾向と,S. Typhimuriumおよびその他の血清型検出数の減少傾向が明らかとなった(図1)。

 血清型の変遷は,サルモネラ集団発生の原因となった血清型の分布からも裏付けられた。すなわち,病原微生物検出情報に報告されたサルモネラ集団発生のうち,患者数10名以上の事件から検出された血清型は,1991年は18種に及んだが,1992年は5種,1993年は11種,1994年は10種であった。その中で,S. Enteritidisによる集団発生事件の割合は,1991年29%,1992年79%,1993年55%と高率であった。1994年は10月までで,既に前年を上まわる93件のサルモネラ集団発生の報告があり,うちS. Enteritidisによる事件は62(67%)を占めた(表1)。

 わが国におけるS. Enteritidisの増加は,ヒトから分離された上位15サルモネラ血清型からも明白である(表2)。S. Enteritidisのサルモネラ検出総数に対する割合は1988年は5%であったが(本月報Vol.14,No.1参照),1989年は24%に急増した。以降1990年21%,1991年25%と推移し,1992年および1993年はそれぞれ37%および48%と高率に検出された。

 1972年〜1988年に発生したS. Enteritidis食中毒事件のうち17件,および1989〜1994年11月に発生した457件からの分離株についてファジー型(PT)分布を調べた(表3)。1988年まではPT8が主流であったが,1989年にはPT34が69%を占め,この年のS. Enteritidisの急増はPT34によることが判明した。1990年にはPT4が57%に急増し,PT34は26%にとどまった。1991年も同様の傾向が続いていたが,1992年は新たにPT1の増加が注目された。PT1による事件の割合は,1992年32%,1993年46%,1994年47%で,1992年以降PT1の流行が続いていることが明らかである。1990年以来PT4が流行の主流であったが,1993年以降はPT1に首位の座を譲った。PT4による事件の割合は,1992年44%,1993年33%,1994年34%である。1994年にはPT13aによる事件(本号参照)およびPT22による事件(本号参照)がわが国では初めて発生した。PT13aの2件およびPT22の3件は保育園あるいは小学校での集団発生で,原因食には鶏卵以外の関与が疑われた。PT22は,1993年にわが国の養鶏場で生産されたブロイラーからも検出されており,今後の発生動向に注意を払う必要があろう。



図1. ヒト由来サルモネラ検出数,1983〜1993年
表1. サルモネラ集団発生(血清型別事件数;患者数10名以上)
表2. わが国で高頻度に分離されるサルモネラ血清型(1989〜1993年)
表3. Salmonella Enteritidisのファージ型分布(集団発生事件数)





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