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Vol.16 (1995/1[179])

<国内情報>
スナノミ感染者の輸入例


 スナノミ(Tunga penetrans)の原産地は西半球の北緯30度から南緯30度の間のアメリカ大陸と西インド諸島にあった。ところが1492年コロンブスのアメリカ大陸発見時,サンタマリア号の船員がハイチでスナノミ感染を受け,また,メキシコ出兵(1861〜67年)のフランス兵士らが野営して集団発病している。17世紀にはアフリカ大陸の一部に限局して移動したが,1873年トーマスミッチェル号の船員や砂嚢とともにアンゴラからアフリカ西海岸まで広く蔓延していった。そして19世紀終りにはインド人の集団移動によってスナノミ汚染地域はインド,パキスタンにまで拡大,さらに第一次世界大戦では東アフリカ戦線で,第二次世界大戦ではエチオピア戦線で兵士が集団でスナノミ感染を受けている。そして最近ではアフリカや南米地域への旅行者の発病報告がみられている。

 わが国では西本・中島(1975)の最初の報告以来12例が報告されているが(内野田ら,1984の報告は輸入までには至っていない),30〜40歳代で1例を除きすべて男性である。本症輸入例は今後も増加する傾向があり,早期における対処がなされなければ土着することも考えておかねばならない。

 本虫にはノミの名前があるが,虫体は跳躍力が弱いため主に足(踵,爪下部),まれに手,臀部,会陰部に侵入する。雌虫が人体内に侵入すると二次感染により爪囲炎,蜂巣織炎様になり,さらにガス壊疽のため足・指等を切断するまで至る。時には破傷風を併発し,死亡する場合もある。

 成虫は1mmと小さく,乾いた砂地に生息し,雌雄ともに家畜やイヌ,ネコ,ネズミ,そしてヒトの皮膚に寄生し,吸血する。交尾後の雌は宿主の皮膚内に潜入し,吸血により栄養をとり,卵が成熟すると腹部が膨大して5mm以上にもなり,150〜200個の卵を産み自分は死亡する(寄生後死亡まで2〜4週間)。虫卵はやがて土に落ちて2〜3日で孵化し幼虫になる。気候条件によって1週間から3カ月を経て蛹になる。蛹は1週間〜1年で成虫になる。



予研寄生動物部 影井 昇


スナノミ(Tunga penetrans)感染者の輸入例





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